日頃からトレーニングに励む人にとって一番恐ろしいこと。
特にスプリンターの方やランニングを行っている方は下半身の怪我による練習の中断です。
せっかく身につけた成果が振り出しに戻ってしまうだけではなく、受傷部位や内容、そしてリハビリの仕方によってはその後のトレーニングに支障をきたす場合もあります。
しかし、どんな時もがむしゃらに頑張ることが美徳だという考えがいまだに残るスポーツ界。
実は正しい知識を持たないまま、怪我に対処しているケースも多く存在しているのです。
そこで今回は、多くの人が苦しむ下半身の怪我、特にマラソン練習などランニングで頻発する怪我について詳しく考えていきたいと思います。
中にはケアを疎かにしがちだけど実はあなたの未来のトレーニングに悪影響を及ぼしかねない「隠れ重症」の怪我もあるので痛みの原因はなにか、そして予防法や対処法など、実用的な知識を身につけていきましょう!
多くの人が悩む「膝痛」
最初は、下半身の怪我の代表格ともいえる膝痛です。
運動している人だけではなく、高齢者や肥満の方から成長期の子どもまで発症しやすいまさに国民病であると言えるでしょう。
しかし、それぞれの年齢や生活状況によって痛みの原因はさまざまです。
日頃からランニングを行っている人の場合、どのようなことが原因となり得るのでしょうか?
①オーバーワーク
自分の実力以上のトレーニングを継続して行っていると、身体が負荷に耐えられなくなり、関節や腱が炎症を起こします。
ランニングの場合だと、初心者がいきなり無理に長い距離を走ったり、スピードを上げたりすることがオーバーワークにあたり、陥りやすいです。
②不適切なシューズを用いての練習
継続したランニングを行うと、その分シューズも消耗します。
1足だけしか持っていない人が同じものを繰り返し使うとその影響は顕著にあらわれ、地面を支えるグリップや衝撃を吸収するソールが薄くなるなどして、足への負担が非常に大きくなってしまいます。
そのことに気付かず練習を行い、気づいたら膝を痛めていたというケースがほとんどです。
シューズの消耗は、他の部位の怪我にも深く関連しているため、特に注意しましょう。
③アスファルトでの練習
ランニングをする場所もポイントで、毎回アスファルトの上で練習を行う人は注意が必要かもしれません。
地面が固く衝撃が足に伝わりやすいため、正しいフォームを習得できていない初心者などにとっては怪我のリスクがとても大きくなります。
社会人になるとなかなか時間が取れず、アスファルトでのランニングが多くなってしまいがちですが、時間がある時には芝生や砂地など、地面が柔らかいところで長い距離を走るなど対策をしましょう。
ランナーに多く見られる膝の怪我
①腸脛靭帯炎(ランナー膝)
ランニングによって生じる膝周辺の痛みの総称を「ランナー膝」と呼びますが、その中でも特に多いのが腸脛靭帯炎による膝の外側の炎症です。
走る際に膝が屈伸運動を繰り返すことで、骨盤の外側辺りから膝の外側辺りにかけて通る腸脛靭帯が大腿骨の外側と擦れ、炎症が起こります。
オーバーユースが主な原因で、初期は休養によって回復しますが、悪化すると安静時にもズキズキとした痛みが取れなくなる厄介な怪我です。
〇治療法
一番大切なのは、膝の外側に痛みを感じたらランニングを中止して2~3日安静にすることです。
そして、腸脛靭帯を自分の指やゴルフボールなどを使ってほぐしたり、股関節周りのストレッチを行って固くなった腸脛靭帯やその周囲の筋を伸ばしていきます。
腱と骨が擦れて痛んでいるので、その周囲を指先などで圧迫するのはかえって症状を悪化させるだけなので絶対にやめましょう。
場合によっては、アイシングや湿布で直接炎症を取り除くことも必要です。
〇予防法
オーバーユースに気を付けるのが一番の予防法ですが、加えて走る向きに意識を向けてみましょう。
例えば、いつも走るコースが時計回りだとすると、左足の方が右足よりも受ける衝撃が大きくなり、バランスが悪いです。
このような場合は、時々反対回りで走る日を設けるなどして、左右で極端な負荷の違いが生まれないようにしましょう。
また、いつも履いているシューズにも注目しなくてはいけません。
クッションの部分は十分か、重さは適切かなど、走る時に気になるようであれば新しいシューズに履き替えることをおすすめします。
②膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)
膝の中央部分が痛むのであれば、疑われるのは膝蓋靭帯炎です。
膝蓋骨(膝のお皿)と脛骨をつないでいる靭帯がありますが、この靭帯がランニング時の繰り返される小さなジャンプ動作で少しずつ傷つき、損傷が起こります。
初めのうちはウォームアップによって痛みが軽減していきますが、悪化すると練習後に激痛が生じるようになり、さらに悪化すると軽いウォーキングでも苦痛に感じるほどの痛みが発生します。
放っておくと骨や軟骨が剥がれることで変なでっぱりを生んで慢性的な痛みとなる恐ろしい怪我です。
〇治療法
腸脛靭帯炎同様、痛みが出たらすぐに練習を中止して安静にします。
同時に、大腿四頭筋(太ももの前の部分)を伸ばすストレッチを行っていきましょう。
また、ジャンパー膝になる人のランニングフォームは、上へとジャンプする要素が多く無駄な負担が膝にかかっていると言われています。
痛くて走れない期間を有効活用して、正しいランニングフォームの習得にも時間を割いて再発防止に努めましょう。
〇予防法
治療法でも述べましたが、ジャンパー膝はランニング時の上方向への力の成分が大きいことで発生しやすくなります。
その原因として、ふくらはぎのバネに頼った走りになっていることが考えられます。
股関節やお尻周りの筋力が弱いとふくらはぎに頼りがちな走りになることが多いので、こういった部位を意識的に鍛えるトレーニングを行い、走りに活かすようにしましょう。
③鵞足炎(がそくえん)
膝の内側が痛むときに疑われるのが鵞足炎です。
ハムストリングス(太もも後面の筋肉)や内転筋(太もも内側の筋肉)の腱が骨と擦れたり、腱同士が擦れ合うことで痛みが生じます。
特に、トゥーアウト・ニーイン(つま先が外を向き、膝が内を向く)の動きの時に内側の筋への負担が大きくなるため、炎症が起こりやすくなります。
癖になると股関節の可動域が狭くなり再発しやすくなるため、こちらも予防とケアが重要です。
〇治療法
安静にするのは既に解説している2つのものと同じです。
鵞足炎の場合は、ハムストリングスの柔軟性の低下が主な原因として考えられるので、ストレッチもハムストリングスを中心に行いましょう。
また、股関節の可動域が狭くなりやすいため、こちらも注意する必要があります。
〇予防法
ハムストリングスのオーバーユースが原因となることの多い鵞足炎。
適切な練習量の把握に努めることが何よりの予防です。
特に、ストレッチなどケアの知識が不足しがちな初心者が陥りやすい怪我なので、膝の内側には特に注意を払います。
日頃からアイシングの習慣をつけておくと、炎症を防ぐことにつながるでしょう。
ランナーの天敵「シンスプリント」ってなに?
ここまでは膝の怪我について考えていきました。
初心者ランナーが悩むことの多い膝の怪我ですが、それと同じか、あるいはそれ以上多くのランナーを苦しめるものがあります。
それが、本項で紹介する「シンスプリント」です。
ランナーであるならば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
名前は浸透しているが、実態は意外と知られていないシンスプリントについて考えていきましょう。
シンスプリントの基本
シンスプリントとは、運動時にすねの内側や外側が痛む怪我です。
「過労性脛部痛」「脛骨内側症候群」とも言われており、その原因はさまざまですが、多くは骨膜や腱の炎症から生じます。
オーバーユースやランニングフォームの悪さ、路面状況などが要因となり脛骨の下1/3の位置に鈍い痛みが走ることが特徴です。
初期はランニング開始後徐々に痛んできますが、症状が悪化すると軽いウォーキングでも痛んでくるようになります。
さらに悪化すると、何もしなくても鈍い痛みが消えなくなり、回復も遅くなって日常生活にも大きな悪影響を及ぼすのです。
最大の原因はランニングフォームにある?
シンスプリントの発生要因でもっとも大きいと言われているのが、効率の悪いランニングフォームでの練習です。
正しいランニングフォームで走っているならば、基本的にシンスプリントは発症しないとまで言われることもあります。
脛骨の過負荷が原因ということもあり、競走馬も発症するシンスプリントですが、速く走る馬は発症しにくいそうです。
これは人間の場合も同じで、マラソンのトップ選手たちはあまりこの部位を怪我することはありません。
速く走れる人間や馬は、臀部や股関節周辺の大きな筋を上手に利用して走っているからです。
何度もシンスプリントを発症する人は、根本的なランニングフォームの見直しから取り組んだ方が良さそうですね。
シンスプリントの対処法
では、もしもシンスプリントを発症してしまったら具体的にどのような対処をすればよいのでしょうか?
しっかりと治療するために必要なことを順番に考えていきましょう。
①まずは安静にする
他の怪我と同様、痛みが走ったらまずは練習を中断して安静にすることが必要です。
炎症が起きている最初の段階ですので、初期に気付くことができれば2~3日で痛みは消えます。
ますは痛みが引くまで足を休めましょう。
②アイシングで炎症を取る
練習を中断することと同時にアイシングをしっかりと行いましょう。
痛みが引いても、炎症が残っていれば練習を再開後すぐに痛みが戻ってきます。
痛みが消えてからも、少なくとも3日間は練習後のアイシングを徹底します。
③下肢のストレッチを行う
練習の中断だけで痛みが取れそうにない場合は、下肢のストレッチに重点を置きます。
股関節、足関節アキレス腱といった部位に負担が集中しているケースが多いので、張りが強い箇所がないかを確認していきましょう。
特に、膝裏付近はシンスプリントの際に張りが出ますので、ここをほぐすと症状が改善することが多いです。
④脛骨に負担をかけないように身体を動かす
1週間以上ランニングの中断が必要になりそうな場合は、脛骨に負担をかけないような運動を行います。
近隣にスポーツ施設があれば、水泳やエアロバイクで全身運動を行うことがおすすめです。
自宅でトレーニングを再開する際は、タバタプロトコルの実践をおすすめします。
以下の記事を参考に取り組まれると、正しいタバタプロトコルのやり方を実践することができるでしょう。
⑤脛骨に軽めの負荷をかける運動
歩行時の痛みが消失したら、少しずつ脛骨に負荷をかけてリハビリを開始します。
おすすめなのがタオルギャザー。
タオルを足の指ではさみ、片方側は手に持ってつま先でタオルを引っ張るように伸ばしていきます。
この動作を何回か行い、痛みが出ないようであれば少しずつ回数を増やしていきましょう。
30回行って全く気にならないようになれば、次の段階へと進みます。
⑥軽めのウォーキング
タオルギャザーをクリアしたら、ウォーキングへと入ります。
散歩よりも歩幅を広げ、少し早足でウォーキングを行い痛みが出るかを確認しましょう。
これで痛みが出るようであれば、もう一度タオルギャザーの段階に戻ります。
20分間気にならない状態が続けば、ウォーキングの段階はクリアです。
⑦両足踏み切りのジャンプ
ランニング再開前、最後の段階は両足踏み切りでのジャンプ動作です。
瞬発的な動作で痛みが出るか出ないかを確認する意図があります。
ここで痛みが出ないようであれば、リハビリメニューはクリア。
少しずつランニングを再開しても構いません。
もちろん、練習量を一気に増やすと再発のリスクが非常に高いので、最初は5分程のランニングから慎重に始めましょう。
間違った脛骨のセルフマッサージ
シンスプリントについて、最後に絶対に注意したい点を紹介します。
それが、セルフマッサージのやり方です。
痛みの出る箇所を親指などで局所的に圧迫する方も多いですが、実はこの方法、かえってシンスプリントを悪化させてしまいます。
脛骨の腱、骨膜はデリケートな作りになっているため、局所的な圧迫では炎症を悪化させるばかりか、その行為によって炎症が発生することもあるのです。
脛骨のセルフマッサージではとにかく優しく、ゆっくりと圧をかけるようにしましょう。
「足底が痛い」は危険!
まずは初心者も苦しむことが多い足底の痛みから。
運動を始めたばかりのランナーから熟練者まで、さまざまな階層の人で足底の痛みに悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
これらの痛みは、足底筋膜炎によるものがほとんどです。
皆さんも一度は耳にしたことがある怪我の名前だと思います。
足底筋膜炎とは?
足裏には、指とかかとをつなぐように筋肉の膜があり、これを足底筋膜と呼びます。
私たちが歩いたり走ったり、地面の上で活動をするときは一番最初にこの足底筋膜が地面からの衝撃を受けることになります。
通常は足底筋膜が地面からの衝撃に耐えることができるのですが、繰り返し衝撃を受けることで柔軟性が低下したり緊張状態が持続したりして本来受ける負荷以上のものがかかり、炎症が生じるのです。
原因は?
足底筋膜の柔軟性の低下や緊張状態の持続は、アキレス腱や腓腹筋、ヒラメ筋の過緊張から起こることが多いです。
これは、この部位のオーバーユースが引き金となるため、走り過ぎが足底筋膜炎を発症させる原因だと言えるでしょう。
また、足のアーチが崩れている人は足底筋膜炎を発症しやすいと言われています。
偏平足の人は足が回内(内側にひねった状態)しやすいため、土踏まずに負担がかかりこの部分に疼痛が走ることが多いです。
反対に、ハイアーチ(足の甲が極端に高い)の人は足底の柔軟性に欠け、足底筋膜の損傷が起きやすい状態が存在します。
骨格上、足底筋膜炎になりやすい人もいるため、自分がどのような足底の特徴を持っているのかを把握しておく必要がありそうです。
痛みを感じる原因は、筋膜の微小な断裂や炎症などが、足底にある脛骨神経の分岐である外側足底神経に伝わることです。
圧痛や膨張、場合によってはしこりが見られることもあります。
段階ごとの症状
足底筋膜炎は、その進行具合で症状が大きく変わるのが特徴です。
痛み出した直後、発症直後は走っている途中で少し足の裏に違和感を感じる程度で、ランニング終了後には消失します。
それがやや進行すると、走り始めから痛みを感じるようになり、走り終わっても痛みがしばらく続きます。
この段階までは、ランニングの中止などの休養で対処できますが、さらに進行すると厄介です。
休養でも自然と回復しない段階になると、朝起きて一歩目に床につく足に響くような鋭い痛みを感じるようになります。
そして、歩くだけでも激しい痛みを伴うようになり、悪化すると歩けないほどの状態になることもあるのです。
こうなると、自然治癒だけでは回復は望めません。
何かしらの対策を講じる必要があります。
治療とリハビリ
急性期には、何よりも炎症を抑えることが大事です。
練習を中断するのが必須で、足裏への負担減少に真っ先に取り組みましょう。
同時に消炎鎮痛剤を利用して、痛みが引くのを待ちます。
それでもあまり効果がない場合は、足底部や下腿三頭筋に対して低周波治療や低出力レーダーなどの処置を施し、痛みを和らげるように努めましょう。
また、毎日のストレッチも欠かしてはいけません。
症状の程度にもよりますが、このような取り組みを続ければ、1~3カ月のうちに回復して痛みは消えます。
痛みが消えたら運動によるリハビリを開始しますが、この時の一工夫が重要です。
まずはテーピング。足底のアーチを保護するように巻いて、衝撃を和らげましょう。
また、最近では自分に合ったシューズのインソールを用いることも良いとされています。
スポーツ店などに行くと足型を測定してくれて、自分に合ったインソールを紹介されたり、オーダーで作ることもできます。
テーピングやインソールの変更といった方法で、足底部のアーチ形状を機能的に補正することも重要なのです。
痛みが長期化している時は
これらのような方法を用いても、悪化した足底筋膜炎の時はなかなか痛みが引いてくれないこともあります。
足裏は常に地面と接して負荷のかかる部分であるため、自然治癒が難しい部位でもあるのです。
半年以上改善が見えない場合は、かかとに付着している骨棘を直接手術によって取り除く方法もあります。
長期間足底筋膜炎を患っていると、筋や骨の位置が変わることもあるので、骨を取り除いて圧迫を軽減させる方法が有効なのです。
しかし手術後のリハビリは難しいもので、特に足底部の手術後は体重の支え方が手術前と変わり、うまく歩けなくなる人も中にはいるそうです。
リスクはありますが、どうしても痛みが取れない人は検討してみてはいかがでしょうか?
「足首の捻挫」を軽視してはいけない!
さて、次に解説していくのは足首の捻挫についてです。
段差があるところで足をくじいたりして、足首を捻挫したことがある人はいるでしょうか?
他のスポーツ、例えばサッカーやバスケットボールでも捻挫はよくある怪我で、サポーターなどを着用しているプレーヤーも大勢見たことがあると思います。
骨折とは違い、コンタクトしても我慢できる痛みであることが多いことから動きながら完治を目指している選手も多いと思いますが、それは間違っていると言えます。
軽視されがちな足首の捻挫ですが、きちんと治さないと一生苦しむことになりかねないのです。
足関節の構造
足関節は、脛骨、腓骨、そして距骨の3つから構成されており、外側(腓骨側)は前距腓靭帯、後距腓靭帯、踵腓靭帯で囲まれています。
内側(脛骨側)は三角靭帯で構成されており、これらの靭帯が3つの骨を支えることで足関節の安定性は保たれているのです。
可動域が大きい足関節ですが、この可動域は靭帯のバランスの良いポジショニングから生まれるといって良いでしょう。
原因・受傷レベル
足関節は、外反方向(小指が浮く方向へひねる)よりも内反方向(親指が浮く方向へひねる)に可動域が広い関節です。
そのため、多くが外側に位置している前距腓靭帯、後距腓靭帯、踵腓靭帯が伸びたり断裂したりする捻挫です。
ランニング中の場合は、段差などに乗っかってしまうと予期せぬタイミングで急激に内反が起こり、それに耐えきれずに靭帯がダメージを負います。
また、捻挫には靭帯の損傷具合によって程度が3つに分かれています。
1度から3度までで症状やリハビリが必要な期間も変わってきますが、こういった段階分けはあまり認知されていないのが現状です。
1度捻挫
靭帯の微細な損傷や圧痛がありますが、少しひねった程度であるため、2~3日で復帰が可能な痛みである捻挫です。
歩行や軽いジョギングも可能ですが、強度が高すぎると靭帯が伸びたり傷ついたりするので注意が必要です。
2度捻挫
靭帯の部分断裂が起きている段階の捻挫です。
圧痛や腫脹が強く、歩ける程度ですがジョギングに耐えることができる痛みではありません。
装具やテーピング、副木固定が必要で専門機関での受診が勧められます。
競技への復帰についても、早くて2週間、長引く場合は2カ月以上かかるとされています。
3度捻挫
完全に靭帯が断裂した状態が3度捻挫、一番重症である捻挫です。
圧痛や腫脹、熱感や皮下出血が強く、自分で歩くのがやっとな状態です。
医療機関での受診はもちろん、ギプスや装具による強固な固定、状態がかなり悪い時は靭帯の縫合手術が必要になります。
競技復帰には、最低3カ月、もしくはそれ以上が必要になり、リハビリをきちんと行わないと怪我をする以前の動きへの回復は望めなくなるため、焦りは禁物です。
治療
捻挫の治療の基本は、RICE処置と呼ばれる方法です。
スポーツの怪我に広く用いられる方法で、腫れや痛みを抑える効果が期待できます。
R=Rest 安静
怪我をしてまず最初に行うのは、安静です。
どのような部位を受傷したのか、どのような処置が必要なのかを把握するには一定の時間を要します。
それらの情報がない場合は無暗に動かさないのが得策でしょう。
怪我をした部位だけではなく、心臓に近い関節(股関節など)もなるべく動かないようにするのが良いです。
I=Ice 冷やす
患部を安静にしたら、その次は氷やアイスパックで冷やし、炎症を抑えます。
その際は、冷やすために使うものをタオルやビニール袋にくるんでから充てるようにしましょう。
直に冷やすと、凍傷を引き起こすことがあるので注意が必要です。
テープなどで巻き付ける方法がありますが、患部を圧迫しすぎないようにしましょう。
以後、怪我をして48時間は急性期なので、そこまでは冷やす期間を作ります。
きちんと冷やすことができれば、自然と痛みや腫れは引いていきます。
C=compression 圧迫
圧迫と言っても、強く締め付ける訳ではなく、患部が極端に動かないように支えることを指します。
足関節の場合は、可動域を制限しつつ歩行などの衝撃を吸収できるサポーターを付ける方が良いでしょう。
サポーターを着用したままシューズを履くと締め付けが強くなりすぎるので、可能であれば外を出歩くときはサポーターを着用してサンダルなどでゆとりを持たせることも必要です。
痛みが引けばサポーターがなくても十分に動くことができますが、足関節の緩さが残り左右のバランスが崩れることが多いので、左右差がなくなるまでは締め付けの弱いサポーターを着用してランニングを行いましょう。
E=Elevation 挙上
これは怪我をした直後が主な方法です。
心臓よりも高い場所に患部をあげて、血流が心臓に戻るようにします。
こうすることで血流が促進され、炎症を抑えるのに必要なものが患部に届きやすくなります。
靭帯の断裂が疑われるような、重症と思われる捻挫の際に用いるようにしましょう。
捻挫の治療は最初が肝心!
前述した足関節捻挫の治療は、受傷した直後に行うのが非常に大切です。
1回目の捻挫できちんとした処置を行わなかった場合、足関節の緩さが残り、身体のバランスが崩れたり一定方向の負荷に極端にもろくなったりします。
「捻挫は癖になる」と言われるのはこのためです。
何度も同じ部位を捻挫すると、インピンジメント症候群を引きおこすこともあります。
インピンジメント症候群
軸足で地面を蹴り上げたとき、かかと辺りに痛みが走るならばインピンジメント症候群が疑われます。
足関節が底屈した際、足関節で骨同士が衝突したり、軟部組織が挟み込まれたりすることで痛みが生じます。
繰り返し同じ箇所を捻挫した状態を放置して運動を続けると、次第に伸びた靭帯が骨を引っ張り、骨同士がぶつかる状態が生まれ、骨棘が形成されたりするのです。
リハビリはプールやエアロバイクなど、かかと後方に過度な負荷がかからない条件で行うことが好ましいとされています。
また、床に座って足を伸ばし、チューブによって軽い負荷をかけながら足関節の底屈と背屈を繰り返し行うことで、可動域の回復を目指していきましょう。
これらを継続して行うことで、足関節の緩さは少しずつ和らいでいきます。
左右のバランスの違いに苦しんでいる人は、地道に取り組んで力を最大限前方への推進力に変えることができる走りを目指しましょう。
まとめ
今回はランナーが陥りがちな下半身の怪我を紹介し、ケアの方法にも触れていきました。
ランニングは一見そんなに激しいスポーツではないため、怪我についての危機感もおろそかになりがちです。
特に重要な大会を控えた方やこれからランニングを始めようと考える方はぜひ参考にしてみてください。
さまざまなところに危険因子はあるので、日頃からのケアを大切にして、発症を未然に防ぎましょう!