ダイエットを行う際、皆さんはどのような運動を連想されますか?
マシンを使ったウエイトトレーニングや、最近ブームになっているランニングがメジャーなものとして広がっています。
しかし、ダイエットに有効な運動はそれだけではありません。
エアロビックダンスも、幅広い年代の方が取り組める優れた運動なのです。
そこで今回は、詳しく知らない人も多いエアロビックダンスについての解説を行っていきます。
自分の健康づくりに活かせるように、ポイントを押さえていきしょう!
エアロビックダンスとは?
そもそも、エアロビックダンスとはどのようなものなのでしょうか?
その歴史は意外にも古く、1969年にアメリカ空軍基地でのテレビのフィットネスプログラムとしてジャッキー・ソレンセンによって考案されました。
日本では1981年に紹介され、一時は愛好者数が600万人に及ぶと言われていましたが、2006年の調査では205万人と約3分の1ほどに減少しています。
あまり馴染みがないのも納得ですが、意外にも愛好者数が多いことが分かります。
エアロビクスという言葉と混同されがちですが、エアロビクスは有酸素運動全体を指し、ランニングなども含まれるので間違えないようにしましょう。
エアロビックダンスの最大の特徴は、音楽に合わせて多様な動きを取り入れることです。
ファンクやヒップホップ、民族舞踊や武術などの動きを取り入れたり、踏み台、チューブボールなどの道具を使用したりと上級になるとさらにバリエーションが増えていきます。
基本的にはスポーツジムなどで広く実施されており、10~20人ほどの参加者がスタッフの動きを模倣して運動を進めます。
自宅でのエアロビックダンスの例としては、2005年に大ヒットしたビリーズブートキャンプも手軽に取り組めるエアロビックダンスの一種です。
その他にも、自宅で取り組めるビデオも多く販売されており、要点を押さえれば効果的な運動となるのです。
エアロビックダンスの特性
エアロビックダンスには、次のような特徴があります。
①健康・体力づくりに有効
大前提の項目です。
有酸素運動による呼吸循環器系の機能向上が主な目的ですが、その他にも筋持久力、柔軟性、巧緻性など幅広い運動機能の向上に効果があります。
全身を使った運動ならではの特性です。
②特化したプログラムの設定が可能
プログラムに定型がなく、音楽、動きの選択、全体の構成が自由です。
自分の性別や年齢、身体特性や体力などを考慮して、運動を行う必要があります。
最初はスポーツトレーナーなどの専門家に指示を仰ぎ、慣れてきたら自分でアレンジを加える形を取るのが良いでしょう。
③幅広い年齢層が一緒に楽しめる
動作の出来が評価されたり、勝ち負けを競うものではないため、他の運動に比べて性別や年齢を細かく区分する必要がなく、幅広い年齢層の人が楽しむことができます。
同一のプログラムであっても、動き方次第で強度が高くも低くもなるので、この特性が活かされるのです。
しかし、周りに流されると目的から外れやすくもあるため、注意が必要です。
一緒に楽しむのは良いことですが、きちんと自分のやるべきことを行いましょう。
④限られたスペースでも実施できる
一通り動ける場所があれば取り組めるのも大きな利点です。
動き回ることができない広さであれば、その場でステップを踏むことで代用しましょう。
強く地面を踏み締めすぎると足の甲やすねを痛めやすくなるため、自然な着地で足への負担を軽減するよう注意します。
長時間連続での「その場ステップ」は、極力避けるようにプログラムを工夫しましょう。
適切な運動強度と効果
ランニング同様、運動強度の設定には心拍数を用いるのが有効です。
運動を開始したばかりの時期は推定最高心拍数(220-年齢)の50%程度、ある程度運動に慣れてきたら75%程度を目標心拍数としましょう。
この強度の運動を継続して行うためには、以下のポイントを理解しておきます。
①身体の移動(身体重心の上下・水平移動)
身体を遠くに移動させるためには、筋が大きな力を発揮して関節を大きく動かさなくてはいけません。
そのためには多くのエネルギーが必要となるため、ジャンプ動作や大きな位置移動を多く取り入れれば運動強度は高くなります。
反対に、移動距離を小さくすれば運動強度は小さくなるため、その日の体調などを考慮して変化を加えましょう。
②運動に参加する筋量・筋の活動水準
脚の運動に手の動きを加えるなど、複数の筋を同時に動かせば運動強度が高くなります。
また、動かす際にどのくらい力を入れて行うかによっても運動強度は変化するため、プログラムを最後までやりきるためには各場面での工夫も必要です。
意図的に運動強度を下げる区間を設けるなど、強弱をつけて行いましょう。
③動きの速さや反復回数
運動強度は動きの速さによっても変化します。
しかし、全ての動作が速さの増加によって強度が増すわけではないため、注意が必要です。
例えば、腹筋動作を加える場合は、ゆっくりと行った場合の方がきつさも増すため、各動作をよく理解しておきましょう。
運動強度の把握に、心拍数の他に主観的運動強度(RPE)やトークテストといった指標を利用するのも良いでしょう。
目標とする運動強度に達していない場合は、上肢や下肢の動きを大きくしたり歩幅を広くするなどの対処、反対に運動強度高すぎる場合は動作を抜いたり動きを小さくしたりといった変化を加えます。
プログラム全体の流れ
次は、プログラム全体の流れについて考えていきましょう。
エアロビックダンスも、サッカーやバスケットボールといったスポーツと同じように、ウォームアップ、主運動、クーリングダウンの3つの要素で構成します。
この考え方はあまり浸透しておらず、いきなり主運動に入って体調を悪くしたり、クールダウンを疎かにして疲労を残すケースも多発しています。
エアロビックダンスにおいても、準備とケアは重要なことなのです。
ウォームアップ
他のスポーツ同様に、主運動に備えて心と身体の準備を行います。
筋温、心拍数を適度に上げてその後の最大酸素摂取効率を高めることが目的です。
体温が上昇して代謝も高まるため、筋の弾性、腱と靭帯の伸張性も向上し、疲労や傷害の予防にも役立ちます。
130bpm前後(拍/分)の比較的ゆっくりとした動作で全身をまんべんなく動かし、徐々に温めていきましょう。
ここで、スタティックストレッチ(静的ストレッチ)を長時間行ってしまうと、せっかく高まった筋温や心拍数が下がり、筋も弛緩してしまいます。
スタティックストレッチは10秒程度にとどめ、ゆるやかなダイナミックストレッチを積極的に行いましょう。
実施時間は、10分程度を目安とします。
主運動
主運動では、一定の時間目標心拍数に達するような運動を持続することが重要です。
主運動の中でも、
①運動強度を徐々に上げて、呼吸循環器系の働きを高める(アップ)
②前後左右への移動やホップ、ジャンプなどを行って目標心拍数を維持する(キープ)
③心拍数を徐々に下げ、クールダウンへの移行をスムーズにする(ダウン)の3つの局面があります。
キープの局面で最適な心拍数に持っていくように心がけましょう。
また、主運動では、ジャンプを伴う衝撃の大きいステップであるハイインパクトと、ジャンプを伴わないステップであるローインパクトに区分することができます。
下肢の故障歴がある場合は、ハイインパクトの実施は避けてプログラムを組みましょう。
以下に、ハイインパクトのプログラム動画と、ローインパクトのプログラム動画を例として紹介します。
ハイインパクトのプログラム
ローインパクトのプログラム
急激な強度変化を防ぐ
前途のように、アップ、キープ、ダウンの段階を踏む際は、徐々に運動強度を上げたり下げたりすることが目的です。
全体として、ベルカーブを描くような軌道を意識しましょう。
特に、生活習慣病や血管系の疾患を抱えている人の場合、急な運動強度の変更は身体への負担が大きく、状態が悪化することもあります。
30~40分の実施時間を工夫して、体調の悪化を防ぐことも重要なのです。
クーリングダウン
プログラム後の5-10分間は、ストレッチングやリラクゼーションを行って身体をほぐし呼吸を整えます。
主要な関節の可動域を維持、あるいは拡大させましょう。
筋が温まっている状態の方が筋が伸びやすいため、主運動が終わってすぐに取り組むようにします。
筋を伸ばす際も、一気に勢いをつけて伸ばすのではなく、慎重に伸ばすことで筋挫傷を防ぐことができるので心がけましょう。
セルフマッサージも、強く筋を押す前に、心臓に血液が戻るよう心臓方向に向かって表面をなでます。
筋肉痛がひどい場合も、強く局部を圧迫するとかえって悪化する場合があるので、少し弱いぐらいの感覚の方が丁度良いのです。
安全に取り組むために・・・
体調不良や怪我の予防のために注意するべきこともあります。
いくつかご紹介していきましょう。
服装
空調設備が整った室内で取り組む場合は、通気性や吸水性に優れたウエアを着用します。
極端な厚着やサウナスーツだと、体温調節機能が損なわれるためです。
また、関節の動きを制限する中途半端な丈の服装も好ましくありません。
大きな動きをしても、不快に感じない程度の格好で取り組みましょう。
長袖、半袖、いずれにしても締め付けが強い服はNGです。
シューズ
シューズ選びの際には、かかとやつま先全体の衝撃吸収性に優れたものを選びます。
ソールが柔すぎると安定性に欠けて衝撃が吸収できず、硬い靴だと足を固定して動きを制限してしまうため、実際に履いて自分に合うものを見つけましょう。
また、靴底の適度な滑りやすさも大切で、滑りにくい靴底だと床に足首がロックされてしまい、足首や膝を痛める危険性も高まります。
下肢に故障歴がある人は、足関節の過度な回内を防ぐため、アーチ部分にパッドを入れたり、かかとの安定性に優れたシューズを履きましょう。
床
床の材質も、エアロビックダンスにおいては重要な要素となります。
シューズ同様、コンクリートのように固すぎると衝撃の吸収性に欠けるため故障のリスクが高まり、カーペットのような材質でも足首が固定されてしまいます。
適度に滑り、過度なストッパーがかからない床の上で動くようにしましょう。
特に、雨の日や湿度の高い日は体育館のようなフローリングの上だと、いつもと感覚が異なる場合がありますので、主運動に入る前に状況を確認しておくことが大切です。
また、床に横になって取り組む種目を行う場合は、ストレッチマットを利用すると、身体の痛みを軽減できます。
初心者の場合は、少しの衝撃でも身体を痛めやすいため、必須アイテムだと言えるでしょう。
体調の把握
他のスポーツ同様、運動前には必ず自分の体調を把握することが必須です。
次のような場合は、実施を控えるようにしましょう
①食欲不振、睡眠不足、動悸、胸の圧迫感
②安静時体温が37℃以上
③安静時心拍数が100拍/分以上
その他にも、上肢、下肢に違和感や痛みがある場合も、運動の実施は慎重に判断するようにします。
また、運動中にいつもよりきつく感じた際は、ひとまず足踏みでつなぎ、その後の経過を観察しましょう。
全身を用いた運動ですので、身体の隅々までチェックすることが大切です。
利用したいスポーツジム
安全面での対策やプログラムの設定に関する不安が拭えない人にとって、専門のトレーナーの指導を仰げるスポーツジムは有効です。
全国展開のスポーツジムとしては、コナミスポーツクラブやルネサンス、セントラルといった大手でレッスン形式のエアロビックダンスを取り入れています。
HPにはいくつかメニューも紹介してあるので、ぜひチェックしてみましょう!
安全で楽しい雰囲気を!
今回はエアロビックダンスについて解説を行いました。
スポーツジムのスタジオを覗いてみると、男女関係なく幅広い年代の人が一緒に汗を流していることが分かります。
そして、本当に楽しそうに取り組まれている。
ストイックに運動に取り組むのも良いですが、仲間と一緒に楽しむこともあなたのモチベーションにつながりますね。
もちろん、一人でも取り組むことができるエアロビックダンスですが、ぜひ仲間を見つけて取り組んでみましょう。
きっと、新しい運動の形が見つかるはすです!