本格的に寒い季節となってきました。
外に出るのも億劫になりがちですが、ランニング好きの方は待ちに待ったシーズンではないでしょうか?
そう、冬はマラソン大会が目白押しなのです!
各都市で大規模なマラソンが行われるほか、地方でも風光明媚なコースと地域の特色を生かした趣向をこらした大会が数多くあり、ランナーの血が騒ぎますね。
そんなうきうきするシーズンですが、ランナーたちにとっては大会での記録も気になるところです。
せっかく出場したのに、不本意な走りでは喜びも半減してしまいます。
そこで今回は、ランニングに慣れてきて、大会での記録向上を目指すようになった中級者向けのトレーニングについて解説していきます。
自分の練習に取り入れて、大会での成果を出せるように継続していきましょう!
走り始める前に!
さて、早速トレーニングメニューについて紹介していきたいところですが、その前に!
まずは正しい準備運動について学んでいきましょう。
「準備運動ならいつもやってるよ」という方がほとんどでしょうが、ここではランニングの動きに特化した動きを紹介します。
そもそも、なぜ私たちは走る前にストレッチや体操をするのでしょうか?
慣習的に行われてきたものなので、何となく儀式のような気持ちで取り組んでいる人も多いと思います。
いつもの何気ない準備運動を変えるだけで、大幅なパフォーマンスの向上も見込めるのです。
いくつか見ていきましょう。
走る前にはNGの動きは?
よく、走る前に地面に座って足を伸ばし、体を前に倒す柔軟運動を行っている人を見かけます。
こうすることで筋肉を伸ばしているのですが、はっきりいって、運動前に行ってもあまり意味はありません。
それどころか、かえってパフォーマンスを低下させる危険性をあります。
座って筋を伸ばすストレッチを静的ストレッチといい、私たちにも馴染みがありますが、行う際は練習後のケアの際に用いましょう。
その理由としては、ウォーミングアップの目的に合わないことが挙げられます。
ウォーミングアップの目的の一つとして体温を上げることが挙げられるのですが、静的ストレッチでは十分に目的を達成できません。
また、静的ストレッチでは急性の関節可動域の増加を引き起こすことができますが、これにより筋の発揮パワーが一時的に5~30%ほど低下すると言われています。
つまり、走る前にわざわざパフォーマンス発揮を妨げているとも言えるのです。
動的ストレッチの重要性
静的ストレッチがウォーミングアップに不向きであることをお伝えしましたが、その代わりとして動的ストレッチをおすすめします。
その名の通り、動きながら関節可動域を広げていく方法ですが、ここで関節可動域についての説明を行いましょう。
筋肉には可動域があるのは周知の通りですが、それには二種類あり、受動的に伸ばされて動く範囲のPROM(他動的関節可動域)と、自分で動かすことのできる範囲のAROM(自動的関節可動域)に分けられます。
どちらも怪我の予防やパフォーマンスの向上のためには重要な要素ですが、アスリートの場合は特にAROMを重要視します。
その理由は、AROMの働きには、主導筋の収縮と拮抗筋の弛緩のバランスが必要だからです。
このバランスを整えることで発揮できる筋パワーの増大が見込めるため、ウォームアップによりこの能力を高めることを心がけましょう。
具体的な動きをいくつか紹介します。
①肩甲骨回し
①上の図のように指を肩峰付近に立てる
②前回し・後ろ回しを大きく動かす意識で行う
走る際には肩甲骨を動かすことが大切です。
しかし、上半身の動きに関してはないがしろにされがちな部分でもあります。
肩甲骨をほぐしておくことで、骨盤との連動が強化されて推進力が高まるので、忘れずに取り組むようにしましょう。
②股関節回し
①まっすぐに立ち、片方の足の膝が90°に屈曲する角度で上げる(壁に手をついてもOK)
②前回し・後ろ回しを大きく動かす意識で行う
走りに大切な骨盤周りの筋に刺激を入れるストレッチです。
大きな筋肉を使って走ることでよりパワーを発揮することができるため、常に骨盤周りの筋を使って走ることを意識しましょう。
③腿上げ
①肩幅程度に足を開いて立つ
②腿が地面と水平になるまで引き上げる
走りの動作には欠かせない腿上げ動作です。
注意すべき点は、腿を上げた際の膝とつま先の向きを一致させること。
この二つの向きが違うと、膝の負担が大きくなり怪我へとつながってしまいます。
ウォームアップの段階で正しいフォームを身につけることができるよう、しっかりと取り組みましょう。
この3つを取り入れるだけで、走り出したときの身体の動きが格段に良くなります。
中級者になると、走り以外の部分の工夫でスピードアップも図れますので、ぜひ行いたいですね!
特に、体温が上がりにくい冬には、怪我の予防にも大きく貢献してくれるので、積極的に取り入れてみて下さい。
自分の走りを把握する!
中級者がタイムの向上を図る際に重要なこと。
それが正しいペース設定です。
どのレベルのランナーも気を付けるべきことですが、特に中間層ではペース設定やレース展開次第で大幅にタイムが変わってきます。
また、ランナーにはいくつかのタイプがあるのは、皆さんもご存知だと思います。
前半から速いペースで押して後半に粘るタイプがいれば、イーブンペースで押していって後半に強さを発揮するタイプもいたりと、特性はさまざまです。
そこで、自分のタイプを知り、練習で長所を伸ばしていくことで、レースでの持ち味の発揮につなげていきましょう!
今回は、いくつかのタイプに分類して、マラソン練習に取り入れたいメニューに触れていきます。
①前半型
スピードに自信のあるランナーが多い前半型。
レース展開としては、中間点までに少し突っ込み気味に入って、残りの急失速を防ぐレースプランになります。
このタイプのランナーが気を付けるべきことは、スピード感の変化に惑わされないことです。
長い距離を走っていると、わずかなスピードの低下でも、極端に失速したと身体が勘違いすることがあります。
そこで焦って力んでしまうと、走りのバランスが崩れてしまい、余計なエネルギーを使って完走すら危うくなってしまうのです。
そうならないためにも、練習では変化走に取り組んでみましょう。
○変化走
変化走は、例えば10kmを走る間に、1kmごとにペースを上げたり下げたりする練習法です。
最初の1kmは1km4分のペースで走って、その次の1kmで1km3分40秒のペースに上げて、またその次の1kmでは1km4分のペースに落としたりと、違う負荷を次々と身体に入れていきます。
前半は余裕を持って対応できますが、後半になると徐々に楽なペース変化ができなくなってくるのが、この練習のポイントです。
そこでしっかりとペースを保って、身体が重くなってからのペース維持を体感しておきましょう!
②イーブンペース型
一人で走るのが得意なランナーは、終始一貫したイーブンペースを刻むための練習に取り組んでみましょう。
このタイプのランナーは、周りのランナーの動きに惑わされずに走ることで持ち味を発揮します。
長い距離を苦にしない人に多いタイプとも言えるでしょう。
そんなランナーたちが、練習で一定のペースを身体に刻み込むためにおすすめなのが、ペース走です。
〇ペース走
一定のペースを決めて、ひたすらそのペースを守って長い距離を走り続ける練習です。
アップダウンのあるコースなどで取り組む場合も、リズムを崩さないように自分の走りに意識を向けて走ることが大切です。
最初はペースが安定せずにラップタイムもバラバラになりがちですが、慣れてくると時計を見ずともペースが安定してくるようになります。
距離としては、マラソンで走りたいペースで、ハーフマラソンの距離まで練習で走っておけば十分でしょう。
フォームを崩さずに余裕を持てる、ギリギリのラインの見極めを行っていきましょう!
③後半型
走っていく中で徐々にリズムを掴んでペースが上がる後半型のランナー。
エンジンのかかりは遅いですが、その分きつくなる後半での動きが良いため、展開次第ではタイムが大幅に伸びる可能性を秘めています。
「最初から攻めていくのが怖くて・・・」という悩みを抱えている人もいるかもしれませんが、決して悪いことではありません。
その分、ペース変化のやり方を身体に叩き込んで、自分の武器にしましょう。
おすすめの練習は、ビルドアップ走です。
〇ビルドアップ走
一定の距離で段階を区切り、ペースを徐々に上げていくビルドアップ走。
そのバリエーションはさまざまで、短い距離を速いペースで入り後半に少しペースを上げるやり方もあれば、長い距離の中で変化の幅を大きくする取り組み方も有効です。
ペース変化を身体に覚えさせて後半のペースアップにつなげたいので、最初は長い距離の中で徐々にペースを上げていくメニューが良いでしょう。
慣れてきたら、さらに粘る力をつけるために少しきついペースで入って、そこから一段階上げる練習を行うと後半に我慢する能力も高まります。
力んでペースアップするのではなく、走る中でピッチとストライドが自然と伸びる感覚を体感することが大切です!
ランナーの特性はさまざまですが、今回挙げた3つの練習法はマラソンに向けたトレーニングとしてランナーのタイプに関わらず有効であると言えます。
実践練習として、普段のジョグの合間に上手に取り入れていきましょう!
山道を走ってお得にパワーアップ!?
タイプ別のメニューについて紹介してきましたが、次はジョグでの取り組みに焦点を絞って解説を行います。
中級者になると、日頃のジョグは全く苦にせずに取り組めると思いますが、その分面白さも感じにくくなっているのではないでしょうか?
せっかく楽しいランニングも、マンネリ化してしまっては台無しになります。
そこでおすすめなのが、山道のランニングです。
不整地を走るメリット
山道は一般道と違い、地面が整備されておらず走りにくい印象があります。
またアップダウンもあって走るのには向いていないと思われますが、実は練習に積極的に取り入れていきたいポイントが隠されているのです。
まず、アスファルトと違って地面が柔らかい土の場合には、接地の際の衝撃が和らぎ、脚へのダメージが少ない利点が挙げられます。
走り過ぎによる故障がマラソン練習では懸念されますが、週に1回ジョグを山で行うだけでも、そのようなリスクを軽減することができるのです。
また、先ほどアップダウンについて述べましたが、アップダウンがある分、平地よりも遅いペースでも心肺機能に十分な刺激を与えることができます。
つまり、ゆっくりとしたペースで長い距離を走れば、故障のリスクを避けつつ心肺機能の強化も効率的に行えるのです。
それだけではありません。
普段とは違いデコボコした地面での体幹の安定を図る必要があるため、平地ではあまり使われない細かな筋肉に刺激が入り、ブレない走りに役立ちます。
走りながら状態の安定を心がけるだけで、体幹トレーニングもできるのです。
押さえておきたい注意点
しかし、もちろんメリットばかりではありません。
気を付けるべきポイントもいくつかあります。
まず、山道という特殊な環境であるため、走る際は徹底したコースの情報収集が不可欠です。
ジョギングに限ったことではありませんが、道に迷って遭難したり、危険な箇所で怪我をしてしまっては、折角の山道ジョグも嫌な思い出になってしまいます。
走る際には小型のリュックに水分や軽食、スマートフォンなど必要なものを入れて、もしもの時にも対応できる準備を忘れてはいけません。
また、地面がデコボコである分、捻挫の危険性は高まります。
不安な方は、足首にテーピングやサポーターをして固定しておくなど、予防に努めましょう。
ランニングの和を広げよう!
今回はランニング中級者のトレーニングを中心に解説を行ってきました。
一人でトレーニングするのも良いですが、近年はランナーのためのコミュニケーションアプリやイベントも多く、仲間を見つけやすい環境が整っています。
身近にいるランナーと仲良くなることができれば、練習を一緒に行ったり競い合うだけではなく、プライベートでの親交も深めることができるかもしれません。
市民マラソンの意義としては、参加者の親交を深めることも挙げることができます。
たくさんの仲間とともに、豊かで楽しいランニングライフを築いてみてはいかかでしょうか?