長距離走と筋力トレーニングは相容れない!?本当の関係について迫る!

「長距離走、持久系競技でも筋トレした方がいいのかな」

「長距離走と筋トレって関係があるの?」

「走るだけだから筋トレはしなくてもいいのでは?」

長距離走と筋トレの関係についていろんな疑問をもっている方がいると思います。

この記事ではその疑問に答えていきます。

結論からいうと、長距離走などの持久系競技においても筋力トレーニングは有効ですし、競技として少しでも成績を伸ばしたいということであれば、筋力トレーニングを取り入れることは大きな意味があります。

その理由と、実際にどのように取り組めば良いのか、またその際の注意点などについても説明します。

タイトルは長距離走となっていますが、自転車やあるいはクロスカントリーなどの持久系競技について当てはまります。

筋トレの有効性について

「ただ長距離を走るだけなのに筋トレをやる意味があるの?」

「そんなに筋肉は必要ないでしょ」

まずはそういった疑問について答えていきます。

筋トレをすることで得られる結果としては以下のようなものが挙げられます。

1. 筋力が向上する

2. パワーが向上する

3. 柔軟性や関節可動域が向上する

パワーというのは筋力をどれだけのスピードで発揮できるかというものです。

またこのように筋力や筋パワーが向上することによってより楽に、より効率よく走ることができるようになります。

例えばある速度で走ることに必要な筋力やパワーを30だとします。Aさんが発揮できる最大筋力が100だった場合Aさんは自身の30%の力で走り続けているわけです。

ここでBさんの最大筋力が150であればどうでしょう。同じ速度で走る為に30の力を発揮したとしてもBさんにとっては20%の力でしかありません。

また同じ30%のちからを発揮すればBさんは45の力を発揮できるのでAさんの1.5倍の速さで走ることが出来ます。

どちらが良いパフォーマンスを発揮できるのかは一目瞭然だと思います。

もちろんここまで単純な話ではありません。効率の良いフォームや戦略などの影響もありますが、それと同じように筋肉の出力によって差をつけることも出来ます。

詳しくは後述しますが筋力トレーニングを正しく行うことによって、柔軟性や関節の可動域が向上します。これによって例えばより効率のよいフォームで走れるようになるという効果も得られます。

また柔軟性や可動域が向上することで怪我への耐性が増し、長期間に渡って継続的に練習(走ること)に取り組む事ができるようになり、その結果として競技成績が向上するというポジティブな効果もあるでしょう。

他にも関節安定性や腱が強くなることも知られています。

科学的な知見に基づいて考えれば長距離走などの持久系種目においても筋力トレーニングを行うことは常識と言って良いでしょう。

ただ実際にはまだまだその考え方は浸透しておらず、長距離なのに筋トレ?という考え方の人も多いように感じます

逆に言えば、筋力トレーニングを正しく取り入れることで周囲と大きな差をつけることができる可能性があります。

ありそうな反論

筋トレをについてスポーツの現場ではまだまだ否定的(そしてほとんど非科学的)な意見が多くあります。

筋トレは持久系種目に効果的だ!というのがこの記事の主張ですが、この主張に対して起こり得そうな反論を挙げ、それぞれについて解説していきます。

体重が増えて不利になる

筋トレをすると筋肉がついて身体が重くなって長距離には不利だ。

この主張のうち、「筋トレをすると筋肉がつく」、「身体が重くなると長距離には不利」これら2つの主張は正しいです。

しかしこの2つの主張を結びつけることは正しくありません。

確かに筋量は増えますが明らかに成績に影響するほどの筋量は急には付きませんし、トレーニングの負荷のかけ方(重量や回数)をコントロールすることによって筋力を向上させつつ筋肥大への影響を最小限に抑えることも可能です。

具体的には中重量・中回数のトレーニングを避け、高重量・低回数のトレーニングを重点的に行います。つまり肥大に効果的とされる8-10RMを避け、筋力アップに効果的とされる3-5RMの領域でトレーニングを行います。

また筋力トレーニングと持久系トレーニングを並行して行うと筋肥大の効果が減少するということも知られています。 (※筋肥大:筋肉が物理的に大きくなること、筋力:筋肉が発揮する力)

つまりしっかりとデザインされたトレーニングを行うことで筋力トレーニングの(持久系競技への)デメリットを最小限に押さえつつそのメリットを受け取ることができます。

このように何かのトレーニングを新しく加える際にはそのデメリットばかりに注目するのではなく、メリットとデメリットのバランスを考える必要があります。例えば500g増えた筋肉の重さによるデメリットよりも、その筋肉によってもたらされる運動効率の改善や怪我への耐性、柔軟性の向上などのメリットが上回れば良いのです。(そして実際に上回っているからこそ様々な論文で筋力トレーニングによる持久系種目の成績向上が報告されている訳です。)

身体が固くなって動きが悪くなる、怪我をしやすくなる

これもよく聞かれる主張だと思います。

ただしこれには科学的に検証がなされていて、ウェイトトレーニングによって柔軟性が損なわることはなく、むしろストレッチと同等に柔軟性が向上することが報告されています[1]。

それによって関節の可動域が増し、よりスムースで効率的なフォームを身に付けることができる可能性があります。ここで可能性があると書いている理由は次の項で説明します。

またウェイトトレーニングそのものの怪我の発生率は非常に低く、ウェイトトレーニングが怪我の原因になるという主張は間違っています。(もちろん間違ったフォームや無理な重量を扱えば当然怪我につながりますが。)

正しくトレーニングを行えば怪我の可能性は非常に低いです。

また上記のように柔軟性や関節の可動域が向上することで、競技練習中の怪我への耐性も増すためウェイトトレーニングを行うことは怪我をしやすくなるどころか怪我を防ぐといってよいでしょう。

ウェイトトレーニングでつけた筋肉は使えない

長距離走に限らすスポーツ界全体でよく聞かれた主張だと思います。

ウェイトトレーニングは筋力を獲得するために行うもので、(パワーリフティングなどトレーニング種目が競技になっている場合を除き)直接競技成績を伸ばすものではありません。

ウェイトトレーニングで獲得した筋力を競技成績に結びつけるのはあくまでも練習です。

長距離走であれば走る練習をすることで初めて筋力が競技に活きてきます。これは他の競技でも同じです。

ウェイトトレーニングで筋力を獲得し、それを練習で効果的に使えるようにすることで競技成績が伸びるのです。

(かつての日本柔道などがその典型だったと思います。ロンドン五輪で史上初の金メダル0個となった日本柔道が、井上康生監督の元でトレーニングに取り組むようになり、リオ五輪では全階級でメダルを獲得しました。結果は明白です。)

どのように始めれば良いのか

何をやる?

一口に筋トレと様々な種類があります。

バーベルやダンベルを使って負荷をかけて行うウェイトトレーニング、自重で行う自重トレーニング(大きな括りで見ればウェイトトレーニングですがここではわかりやすくするために細分化しています。)、爆発的な力を鍛えるプライオメトリクスやウェイトリフティングなどがあります。

メインで取り組むべきはウェイトトレーニングです。

初心者はフォーム獲得の為に軽い重量で8回3セット、中級者以上は高重量を3~5回、5-8セットほど行いましょう。

ある程度ウェイトトレーニングに慣れてきた段階でプライオメトリクスなどを導入してみると、更に効果を得られるはずです。

自重トレーニングでも特に初心者は十分な負荷を得られますが、次第に自重だけでは十分な負荷を与えることができなくなってきます。

どこでやる?

おすすめはきちんと設備の整ったジムで行うことです。

もちろん自宅でも自重トレーニングなどを行うことが出来ますが、取り組んでいくに連れて十分な負荷が得られなくなってきます。

また殆どのジムにはランニングマシーンなどの設備も整っているので、筋トレだけではなく雨の日にランニングマシーンで走るといった利用方法もできるのでおすすめです。

トレーニングを始める際の注意点

特に競技者の場合、導入時のワークアウト総量に注意する必要があります。

ここでは「ワークアウト=競技練習+トレーニング」とします。

今まで週に10時間の練習をしていてそこに2時間のトレーニングを単純に追加すると、合計12時間となりワークアウトの総量が急激に増えることになります。

またトレーニングに慣れていない段階では身体の適応が追いつかず、身体へのストレスが大きくなってしまい、結果としてオーバーワークになり怪我に繋がりかねません

トレーニング導入初期に身体への負担が急激に増えないようにすることが大切ですが、部活動などでは競技練習の時間を自分で減らすことは難しいと思われます。

そこで導入初期は非常に少ない量のトレーニングから初めて徐々に量を増やしていきましょう。

はじめは物足りないくらいでも構いません。徐々に身体を慣らしていくことが大切です。

社会人ランナー等の場合で、そもそもの練習時間があまり長くない場合はそこまで気にする必要はないかもしれません。

ただし、実際に筋力トレーニングを導入してみていつもより身体の疲労を感じる場合は同じように慣れるまで練習時間を減らしてみましょう。

どんなトレーニングをすれば良いのか

「筋トレの有効性はわかった。じゃあどんなメニューをやればいいのか」

最後にこの疑問について解説します。

※この記事ではトレーニング自体の詳しい説明やトレーニングメニューの組み方の詳細について多くは触れません。

トレーニング未経験者、初心者

ルーマニアンデッドリフトリバースランジこの2つから始めることを強くおすすめします。

トレーニングの王道と言えばスクワットでしょう。トレーニング未経験の方でも知っている方は多いのではないでしょうか。

しかしトレーニング未経験の場合、いきなり正しいスクワットを行うことは難しい場合が多いです。

それは柔軟性の問題であったり単純な筋力の問題であったりします。

なので初心者はまず、スクワットが(自重と同じ重さを担いで)できるようになることを目標に、基礎的な柔軟性と筋力を獲得することを目指します。

 

スクワットの柔軟性で問題になるのはハムストリングス(太腿裏の筋肉)です。ここが硬いとスクワットのボトムポジションで腰を痛める原因になります。

その課題を解決するのがルーマニアンデッドリフトです。

【ルーマニアンデッドリフト】

ポイントは腰が丸まらないようにすること、肩以外の全ての身体のパーツを後ろへ引くイメージで行います。

この時に膝を完全にロックしたり、逆に曲げ過ぎたりしないことを意識しましょう。

この種目はどれだけの重さを持ち上げられるか?ではなく、腰が丸まらない範囲でどこまで下ろせるか?という点が大切です。

腰が丸まらない範囲で目一杯おろしましょう。徐々に下ろせる位置が下がっていくはずです。

 

またスクワットの動作は①しゃがんで②立つ動作です。

しかし①のしゃがむ動作ができても②の立ち上がることが出来なければスクワットは出来ません。

そこでリバースランジでまず立ち上がる筋力を鍛えます。

【リバースランジ】

慣れてきたらペットボトルなどの重りを持ったり、数センチの台の上から始めたりすることで負荷を上げることができます。

この2つのエクササイズに慣れてきたら徐々に自重スクワットに取り組んでいきましょう。

ジム以外でやる場合

自宅で器具がない場合はグッドモーニングでも代用することができます。

【グッドモーニング】

この場合もポイントは腰が丸まらないようにすることです。

動画ではバーを担いでいますが、自重でやる場合は手を耳の後ろに添えましょう。

リバースランジは家でもできますね。

トレーニング経験者、競技レベル中級者以上

トレーニング経験者の場合はBig3と呼ばれるスクワット、デッドリフト、ベンチプレス、その中でも下肢を鍛えるスクワットとデッドリフトをメインにして取組みましょう。

また上記のルーマニアンデッドリフトやグッドモーニングは怪我を防ぐという意味で非常に重要なエクササイズですので、これも継続して取り組むことを強くおすすめします。

【スクワット】

【デッドリフト】

 

ジム以外でやる場合

中級者以上の場合は基本的にジムに通うことをおすすめします。

理由は前述の通り、自宅などでの自重中心のトレーニングでは十分な負荷をかけることが難しくなってくるからです。

ただしその日だけはどうしても自宅でしかできないなどといった場合ブルガリアンスクワットはある程度の負荷をかけることができるのでおすすめです。

【ブルガリアンスクワット】

また公園などのスペースがある場所があれば、ウォーキングランジもおすすめです。

古典的なエクササイズですが非常に大きな可動域で下肢全体を効率的に刺激することができます。

ジムにスペースがあればダンベルなどを持ってやることも良いでしょう。

さらに差をつけたい

トレーニング中級者以上である程度の筋力がついてきたら、プライオメトリクスを取り入れていくと良いでしょう。

縄跳びやアンクルホップなどに取り組むことで走りの効率を高めることができます。

まとめ

1. 筋力トレーニングに取り組むことで持久系種目のパフォーマンスを高めることができる

2. 筋力トレーニングによって柔軟性が向上し怪我をしにくい身体を作ることができる

3. ルーマニアンデッドリフトとスクワットで効果的に下肢を鍛えることができる

以上です。

みなさんも筋力トレーニングを効果的に取り入れてより速く、より楽しく走り続けましょう!

参考文献

[1]Resistance training vs. static stretching: effects on flexibility and strength. Morton SK, Whitehead JR, Brinkert RH, Caine DJ. J Strength Cond Res. 2011

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