脈拍を知りトレーニングをコントロールすべし!見落としがちな脈拍の重要性に迫る

最近では日常生活で測ることも多くなった脈拍。

健康管理のために、毎日計測を行っている人も多いのではないかと思います。

生活の中に浸透していることが示すように、脈拍は私たちの身体の状態を手軽に把握することができる指標です。

健康管理のためだけではなく、自身のトレーニングにも活かすことができるため、ぜひ利用してほしいものです。

そこで今回は、脈拍とは何かを詳しく解説していき、どのようにトレーニングに活かしていけるのかを考えていきたいと思います。

運動を始めてすぐの初心者は、継続してトレーニングを行うためにも必見です。

そもそも脈拍ってなに?

脈拍という言葉はよく耳にしますが、その実態を知らない人は案外多いのではないのでしょうか?

辞書で調べてみると、脈拍とは「心臓の拍動によって生じる動脈壁の振動が末梢血管に伝播されたもの」とあります。

つまり、脈拍を知ることで心臓の拍動状態を知ることができるのです。

一般的に、安静時の正常な脈拍数は60~100回であると言われており、この回数より多かったり少なかったりすると身体の異常が疑われます。

また、一定のリズムで脈拍が刻まれているのも重要で、リズムに異常がある場合は不整脈と呼ばれ、この場合も身体の異常が疑われます。

不整脈には脈が速くなる頻脈、脈が遅くなる徐脈、脈が飛ぶ期外収縮の3種類がありますが、ここで1つ頭に入れておきたいことが。

それは、トレーニング初心者の運動後の脈拍については、慎重に経過を観察することが大切だということです。

運動をすると心臓の収縮が活発になるため、脈拍も安静時と異なった動きを見せますが、トレーニング初心者の場合は慣れない運動によって身体が適応できておらず、不整脈が表れやすい状況が生まれています。

通常はトレーニングを重ねていく中で身体が適応を見せ、運動後の不整脈は消滅していきますが、中には健康状態に見合っていないトレーニングを行うことで心臓への負担が大きくなりすぎているケースも。

このような場合は、動悸や息切れが激しいなどの症状が現れますので、すぐにトレーニングを中止して病院での診察を受けましょう。

ただ、脈拍に関しては個人差も大きく、それぞれが独自のタイプを持っていて経過については一概に言い切ることができない部分でもあります。

運動後の脈拍に着目する習慣をつけて、自分のタイプを知ることから始めることが重要なのです。

脈拍数から見つける適切な運動強度

トレーニングを行う際に、目的に応じた適切な運動強度の設定は非常に重要です。

身体の様々な側面から身体への負荷は評価できますが、その中でも脈拍数は極めて重要で利用しやすいと言えるでしょう。

脈拍数からトレーニング強度を評価する場合は、最初に自分の最大心拍数(MHR)を知る必要があります。(厳密には心拍と脈拍は異なりますが、原則として同値を示すので今回は同義で扱います)

最大心拍数は、220-年齢で簡単に推定できることが広く言われてきましたが、近年ではこの式に異論を唱える人も研究者には多くなりました。

質の高い論文を集めて解析を行う「メタ解析法」によって得られた、より正確な最大心拍数を求める式としては、208-0.7×年齢が現在ではトレーニング現場で利用される機会が増えています。

この式はトレーニング習熟者や初心者、男性・女性のどちらも同じ基準で利用できる式だということも明らかにされているので、こちらを参考にしてみましょう。

%HRmaxの利用・初級編

最大心拍数から運動強度を設定する際、単に最大心拍数の何%の強度で運動を行うかを表す%HRmaxという指標がよく用いられます。

どの域で運動を行うかによって得られる効果が変わるので、効率の良いトレーニングのためにもきちんとした理解をしておきましょう。

ランニングを始めてすぐの方は、以下の表を参考にされると、おおまかな運動強度と目的が分かります。

 

☆運動強度・目的別設定表

レベル トレーニング目的 心拍数目標(最大心拍数から) 運動強度 運動時間の目安 トレーニングの効果
Maximum(レースに備える) 90~100% 非常にきつい 5分未満 瞬発力の向上

最大スピードup

Hard(パフォーマンスの向上) 80~90% きつい 2~10分 最大運動能力の向上
Moderate(持久力の強化) 65~80% ややきつい 10~40分 最大運動能力の向上(有酸素能力)
Light(体重の減少) 50~70% 軽い 40~80分 生活習慣病の予防

脂肪燃焼

Very Light(運動プログラム開始時・疲労回復) 40~60% 非常に軽い 20~40分 生活習慣病の予防

新陳代謝の改善

%HRmaxの利用・上級編

ランニングに慣れてきたら、さらに細かいトレーニングの効果について考えていきましょう。

その際にぜひ利用したいのが、ダニエルズ式トレーニングの指標です。

運動生理学を専攻として、陸上競技界にも多大な影響を与えるアメリカの研究者、ジャック・ダニエルズが長年の研究から編み出したトレーニング法で、現在も数多くのアスリートが、彼の理論を利用して結果を残しています。

彼の提唱する理論は、高いパフォーマンスで結果を残したい競技者向けのものであるため、トレーニングの質も高く、初心者が実施するには正直難易度が高すぎます。

充分なトレーニングを行えるようになってから、実践へと移していきましょう。

5つのランニング強度

ダニエルズ式トレーニングでは、ランニングに必要な能力を鍛えるために、5つの強度にランニングペースを分類しています。

1.Eペース(Easy)

2.Mペース(Marathon)

3.Tペース(Threshold)

4.Iペース(Interval)

5.Rペース(Repetition)

それぞれ目的が異なりますが、この運動強度も%HRmaxを参考にして把握することができます。

効率の良いトレーニングに大きく貢献してくれるので、上級者のレベルアップにはもってこいなのです。

 

☆ダニエルズ式トレーニング・運動強度と効果

タイプ 心拍数(%HRmax) 練習1本の持続時間 トレーニング効果
E 65~78% 30~150分 心筋強化・毛細血管発達
M 80~89% 40~110分 Eペースと同様

ペースに慣れる

T 88~92% 5~20分 持久力強化(閾値向上)
I 97.5~100% 5分 有酸素性作業能向上
R 100% 2分 無酸素性作業能向上

ランニングエコノミー向上

ここで特に注目したいのは、Mペースの運動強度と効果です。

心拍数の目安が比較的高い割には、その生理学的な効果はEペースと同様であることが分かります。

つまり、負荷が高い割に身体に現れる効果がそれほど高くないのです。

このことからも分かるように、基本となる心筋を鍛えるトレーニングを行う際は無理をしてペースを上げる必要はあまりありません。

マラソンに向けてペース感を磨きたいなどの目的があるならば取り組む必要がありますが、基本はゆっくりとした長めのランニングで鍛えることができるのです。

ダイエットに生かすためには?

ここからは、脈拍をダイエットに生かすための方法について考えていきたいと思います。

よく、「有酸素運動がダイエットによい!」という話を耳にしますが、この説は正しいのでしょうか?

先ほど提示した運動強度の表でも示したように、確かに脂肪燃焼には40~60%HRmaxの範囲の運動で高い効果があることが分かっています。

これにはエネルギー産生機構が関連しており、上記のような心拍数の範囲が有酸素系のエネルギー産生の範囲であるため、その際にエネルギーを生み出す材料となる脂肪が利用されるのです。

しかし、高い心拍数で行う無酸素運動の場合はどうでしょうか?

この点について多くの人が誤解をしているのですが、実は無酸素運動でも脂肪を消費してダイエット効果を得ることができるのです。

これには、運動による脂肪燃焼率が関係しています。

脂肪をエネルギー源に用いる有酸素運動では、もちろん脂肪燃焼率は高くなります。

ただ、同じ時間運動を行った場合、消費カロリーが大きくなるのは高強度の運動です。

(例)30分の運動の場合

○60%HRmaxの運動 ⇒100kcalを消費/脂肪燃焼率50%
○80%HRmaxの運動 ⇒180kcalを消費/脂肪燃焼率40%

脂肪燃焼量=100kcal×50%=50kcal
脂肪燃焼量=180kcal×40%=72kcal

 

みなさん、お気づきでしょうか?

実は、高強度運動のほうが、低強度運動と同じ時間運動を行った場合での脂肪燃焼量は多いのです。

つまり、短い時間でしかランニングが行えない場合は、速めのペースで走ったほうが多くの脂肪を燃やすことができます。

脂肪の燃焼の割合が糖の消費の割合を上回るのが運動開始後20分といわれていますので、それより短い時間しか確保できない場合は、いつもより追い込んだランニングを行うようにしましょう。

心拍数を上げない有酸素運動にこだわるだけでは、トレーニングの幅が狭まってしまうのです。

マラソン選手は心拍数が少ない?

最後に、スポーツ選手の心拍数について面白い知識を紹介したいと思います。

マラソンなどの持久系の種目を専門としているスポーツ選手は、安静時の心拍数が40~50回ほどである人が多いといわれています。

シドニーオリンピックの女子マラソンの金メダリストで「Qちゃん」の愛称で親しまれた高橋尚子さんの現役時代の心拍数は、なんと30回。

これは、健康な普通の成人の約2分の1という少なさです。

では、なぜこのようなアスリートたちは安静時の心拍数が少ないのでしょうか?

その謎を解くキーワードは、「激しい運動への適応」です。

持久力を必要とする運動を続けるには、全身の筋肉に酸素を含んだ血液を大量に送る必要があります。

その際に対処することができる身体の反応としては、以下の2点が挙げられるでしょう。


1:一定の時間内に心臓がたくさん収縮する

2:1回の収縮で送り出すことのできる血液量を増やす


1に関しては、心拍数を増やすという形で対処をすることができます。

しかし、人間の最大心拍数には限界があり、どこまでも収縮を速くすることはできません。

そこで、スポーツ選手の身体はより多くの血液を全身へ送るために、心臓を大きくして1回の収縮で全身に運ぶことのできる血液量を増やそうとするのです。

その結果、多くの血液を必要としない安静時は、少ない心拍数でも生存するために必要な血液量を賄えることになり、徐脈となります。

このような持久系スポーツ選手の大きくなった心臓のことを、俗に「スポーツ心臓」といいます。

スポーツ心臓は珍しい!?

それでは、私たちもトレーニングを継続していれば、スポーツ心臓を手に入れることができるのでしょうか?

非常に残念ですが、スポーツ心臓を手に入れるためには、大人になってからのトレーニングでは手遅れだといえます。

このスポーツ心臓を持つアスリートは実は非常に少なく、幼少期から厳しいトレーニングを積んできたごく一部の人しか手に入れることができません。

また、そのような一流のアスリートの人たちも、現役生活を退けば、1年ほどで普通の大きさの心臓に戻ってしまいます。

心拍数が上がらないのは危険信号の可能性が!

いくら運動をしても心拍数が70~80回程度までしか上がらない場合は、心臓が重大な病に侵されている可能性があります。

血液の供給が需要に追いついていないため頭に酸素が回らず、失神して倒れてしまったり、ひどい場合には心臓が停止してしまうことも考えられる恐ろしい状態なのです。

原因は心臓の中で心拍数の調整を行っている洞房結節の機能低下で、経過を慎重に観察していく必要があります。

異変に気づいたら、楽観視せずに早急に病院へと向かうようにしましょう。

健康状態を把握する大切さ

今回は、脈拍についての解説を行っていきました。

心臓の情報を手軽に知ることができ、トレーニングに有効に活用できる指標であることが分かったと思います。

しかし、今の日本の現状では心拍数を目安にしたトレーニングが広く行われているとはいえません。

過度な身体への負荷がオーバートレーニング症候群へと繋がり、ランニングの続行が不可能になる人も多くいます。

重要なのに見落としてしまいがちな部分であるからこそ、正しい知識を得てトレーニングに生かしていきましょう。

無理をせず、楽しく運動を続けるための良い指標となるはずです。

PAGE TOP