トレーニングとアルコール、正しい付き合い方を考える

大人になって多くの人が付き合うことになるもの、それがお酒です。

ビールやカクテル、様々な種類のお酒に親しむことになりますが、トレーニングとの兼ね合いを考えるとどのように飲んでいくのかが重要になります。

せっかく質の高いトレーニングを行ったとしても、間違ったお酒の飲み方をしていては一向に効果も上がらないからです。

しかし、無理をして全くお酒を飲まないのも何だか寂しい。

そんな人たちのために、今回はトレーニングに励む人たちが取り組むべき正しいお酒の飲み方について考えていきます。

美味しいお酒を嗜みつつ、しっかりとトレーニングにも精を出していきましょう!

「酔い」を知ろう!

お酒を飲むと、人は酔っ払います。

気分が高まり、楽しい気持ちになる分には良いのですが、量を間違えると足がふらついたり、立てなくなったりと苦しい思いをすることもあります。

まずはお酒を飲んだ時の酔っぱらいの加減を知って、自分の酔いをコントロールできるようにしましょう!

 

☆アルコールの血中濃度と身体への酔いの段階

血中アルコール

濃度(%)

お酒の量

(ビール中瓶/500ml)

酔いの状態 脳への影響
爽快期 0.02以上0.05未満 ~1本 ・爽やかな気分になる

・皮膚が赤くなる

・陽気になる

・判断力が少し鈍る

大脳新皮質(脳の理性を司る部分)の働きが低下し、反対に、大脳辺縁系(本能や感情を司る部分)の働きが活発になる。
ほろ酔い期 0.05以上0.1未満 1~2本 ・ほろ酔い気分になる

・手の動きが活発になる

・理性が失われる

・体温が上がる

・脈が早くなる

酩酊初期 0.1以上0.15未満 3本 ・気が大きくなる

・大声でがなり立てる

・怒りっぽくなる

・立てばふらつく

酩酊期 0.15以上0.3未満 4~6本 ・千鳥足になる

・何度も同じことをしゃべる

・呼吸が速くなる

・吐き気が起こる

小脳まで麻痺が広がると、足元がふらふらになったり、一人でまっすぐ歩けなくなったりする。
泥酔期 0.3以上0.4未満 7~10本 ・まともに立てない

・記憶がはっきりしない

・言葉がめちゃくちゃになる

海馬(脳の記憶を司る部分)が働かなくなると、今やっていること、起きていること記憶できない(ブラックアウト)状態になる。
昏睡期 0.4以上0.5未満 10本以上 ・揺り動かしても起きない

・大小便は垂れ流しになる

・呼吸はゆっくりと深い

・死亡

麻痺が脳全体に広がると、延髄(脳の呼吸を司る部分)も危ない状態になり、死に至ることもある。

一般的に気分よく楽しく飲めるのは酩酊初期までで、それ以上の段階になると気持ち悪さが上回るようになります。

ビール瓶の目安を記載していますが、これは日本人の平均的な量で、お酒を飲むのが苦手な人、アルコールに弱い人はもっと少ない量で状態が進行していくと考えてください。

上の表からも分かるように、お酒を飲むことで現れる現象は、アルコールが脳へ影響を及ぼすことによって生じています。

むちゃな飲み方をすると、身体にとって良くないことが起きるのは明らかです。

 

アルコールによる身体への影響

アルコールが脳へと影響を与えることが分かったと思いますが、その他にも過度な飲酒によって様々な作用を私たちの身体に及ぼします。

それらの中には、アスリートのパフォーマンス低下の要因となりうるものもあるため、自分の種目に影響するものは特によく理解しておきましょう。

肝機能の低下

口から入ったアルコールは、胃から20%、小腸から80%が吸収され、その大部分が肝臓で処理されます。

肝臓内では、最初はADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾールエタノール酸化系)によって分解され、悪酔いや頭痛、動悸の原因となるアセドアルデヒドになります。

さらに、肝臓内のALDH(アルデヒド脱水素酵素)により酢酸へと分解されます。

この酢酸が血液により全身に巡り、水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気中に含まれて体外へ排出されるのです。

このように、肝臓が代謝に多大なる貢献をしているのですが、アルコールを飲み続けると、肝臓での中性脂肪の合成が高まり、その結果、肝臓に中性脂肪が蓄積した状態の脂肪肝になってしまいます。

さらに飲酒を長時間続けると、肝臓に線維が生成されて肝線維症や肝硬変になったり、肝細胞が急激に破壊されてアルコール性肝炎になる場合もあります。

こうなってしまってはもう手遅れで、全身でエネルギーを作りながら力を発揮する有酸素系の競技では致命的です。

十分なエネルギーを作り出すことができず、パフォーマンスが著しく低下してしまいます。

「沈黙の臓器」と言われるように異変に気付きにくいのが肝臓ですので、持久系競技者は肝臓の状態に細心の注意を払いましょう。

筋肉の破壊

一度に大量のアルコールを摂取すると、「急性アルコール筋症(ミオパチー)」と呼ばれる状態に陥ることがあります。

筋力が低下するだけではなく、筋繊維の部分的壊死が起こることも報告されており、特に速筋繊維で起こりやすいという研究結果もあります。

また、筋の萎縮がおこる場合もありますが、これはアルコールの慢性的な摂取でテストステロンの合成量が低下することが原因だと考えられます。

テストステロンは男性ホルモンの一種で、筋の成長を促進する働きがありますので、これが低下するとせっかくトレーニングで身につきそうな筋の合成を妨げることになるのです。

ウエイトトレーニングによって筋量の増加を狙うアスリートにとっては死活問題で、パフォーマンスの低下を招くことに加え、見た目も理想からかけ離れる原因になりかねません。

一気飲みでこのような現象は起こりやすいので、一度に大量のお酒を飲むことは絶対に控えましょう。

男性の方が影響を受けやすい?

2017年、ノース・テキサス大学のデュランティらは筋トレ後のアルコール摂取によって、筋タンパクの合成を促進する主な調整因子とされているmTORという酵素の活性が減少することを明らかにしました。

また、その減少率についても、特に男性の方が大きな影響を受けていたことが実験結果として挙がりました。

ウエイトトレーニングなどは男性の方が取り組む機会が多い傾向があります。

特に注意してトレーニングの計画を立てたり、食事に気を遣う必要があるでしょう。

カロリー過多

お酒は飲み物ですが、高いエネルギーを有しています。

そのため、むやみに飲んでいてはたちまちカロリーオーバーとなり、肥満の原因になりかねません。

夕食と一緒にお酒を嗜む人も多いと思いますが、その際は食事から摂取するカロリーとの合算で適切なカロリー摂取を行うように心がけましょう。

食事では適正な量を摂取しているのになかなか体重がコントロールできない場合は、お酒から得られるカロリーを考慮できていない可能性があります。

缶やラベルを見て、どのくらいのカロリーなのか確認することを忘れずに行いましょう。

また、エネルギー摂取のメインは食事である必要があります。

お酒は糖質を多く含んでいますがその他の栄養素が不足しているため、栄養が偏ります。

あくまでも食事が基本、お酒はおまけ程度でカロリー計算は行いましょう。

女性が受ける影響

女性がアルコールによって受ける影響は男性と異なります。

男性は過度なアルコール摂取によってテストステロンの活性が抑制されるとありましたが、女性の場合にはむしろテストステロンの合成が促進されるという研究結果もあります。

テストステロンがいわゆる「男性らしい」身体を作るのに効果的であるならば、筋肉をつけたい女性にとってはお酒も味方になるかもしれませんね。

正しくお酒と付き合うために

ここまではお酒が人体に与える影響について、ネガティブな視点を中心に述べてきました。

確かに、お酒は人体へ悪影響を与えることもありますが、正しく飲めば楽しむことができるものでもあります。

社会人になり、トレーニングをするからと言って全く飲まないのも、人間関係を狭めるなどの弊害を生む原因にもなりそうです。

トレーニングの成果を消すことなく、かつ楽しくお酒を飲むにはどのようなことに気を配れば良いのでしょうか?

 筋に悪影響を及ぼしにくいアルコール摂取限度量(男性)

体重 アルコール度数5%ビール量
60kg 約1.5L(缶ビール約4.2本)
70kg 約1.8L(缶ビール約5本)
80kg 約2L(缶ビール約5.7本)

※お酒に弱い人

表に示した量であれば、あまり筋への悪影響はないとされています。

むしろ、適量のお酒は筋の合成を促進する可能性も考えられ始めています。

2006年に行われた研究では、男性の場合、体重1kgあたり1g以下のアルコールを急性、慢性の両方で摂取したところ、テストステロンは影響を受けないか、活性の増加を示しました。

体重の重い人の方がアルコールの許容量が多く、一般的には多くのアルコールを分解することができるため、自分の体格を考慮に入れながら飲む量は決めましょう。

参考までに、お酒の種類と度数、アルコール量をまとめました。

お酒の種類 度数 アルコール量
ビール(1缶355ml) 5.0% 14g
ウイスキー(ダブル60ml) 40.0% 19g
ブランデー(ダブル60ml) 40.0% 19g
ワイン(1杯120ml) 12.0% 11g
焼酎25度(1合180ml) 25.0% 36g
清酒(1合180ml) 15.0% 21g

飲む前に乳製品を摂取する

いきなりお酒を大量に摂取すると、胃に大きな負担がかかって内臓疲労の原因となります。

「すきっ腹にビールは毒」とよく言いますが、他のお酒についても同様です。

自然な形で代謝を促すためにも、飲む前にチーズや牛乳などの脂肪分を多く含む製品を食べて、胃腸の粘膜を保護しましょう。

その他、アルコールを分解するのに役立つ果糖を多く含んだグレープフルーツなど柑橘系の食材もおすすめです。

二日酔いになってしまったら

仮に飲み過ぎて二日酔いになってしまったら、アルコールによって失われたビタミンやミネラルの補給が不可欠です。

緑黄色野菜がおすすめで、サラダを食べて速やかな回復に努めましょう。

また、お酒と一緒に食べるおつまみには塩分が多く含まれているものが多く、逆に食物繊維は不足しがちです。

根菜類などは豊富な食物繊維を含んでいるため、これも緑黄色野菜とセットで食べるとなお良いでしょう。

その他、働いた肝臓が必要としているタンパク質を、豆腐や豚肉などから補給できると、アフターケアもばっちりです。

休肝日を設ける

適量なら身体に有益なお酒も、毎日飲み続けるのは得策ではありません。

アルコール代謝は多くのエネルギーを必要とするため、慢性的な疲労感に繋がることもあります。

そこで、1週間のうちに少なくとも2日は全くお酒を飲まない休肝日を設けると良いでしょう。

特に該当日にしたいのは、「ハードなトレーニングの前日」と「ハードなトレーニングの日」です。

この期間で身体はパワーアップするための準備を整えてトレーニングへと向かうので、飲みたい気持ちをグッと抑えて、他の部分で栄養補給をしましょう。

もちろん、その他の日に無理して飲むことを推奨しているわけではないので、自分に合った量を見極めることが大事です。

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まとめ

今回はアルコールとの正しい付き合い方について解説していきました。

プロスポーツ選手の仲にも、お酒で失敗して成績が伸び悩む人はたくさんいます。

反対に、お酒で気分転換をしてパフォーマンスを高めていく人もいます。

その昔、プロ野球の阪急で活躍し完全試合を達成した今井雄太郎投手は、極度のあがり症を克服するためにビールを飲んでマウンドに上がったこともあるそうです。

このような例は極端ですが、皆さんもお酒との向き合い方によってはトレーニングがより豊かになります。

楽しみながら適切な距離感を築いていきましょう!

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