持久力向上に取り組む!全身持久力と筋持久力

長く運動を続けるために必要な持久力。

スポーツ場面のみならず、日常生活を豊かにするためにも必要な能力です。

生活習慣病の予防や肥満の改善効果も期待できるため、年をとっても健康な身体でいるためにも、日頃から鍛えておく必要があるでしょう。

そこで、今回は「全身持久力」と「筋持久力」について解説していきます。

生活に密接に関係してくる能力であるため、より確かな知識を身につけて、自信を持ってトレーニングに臨めるようにしましょう。

全身持久力とは?

そもそも、全身持久力とはいったい何者なのでしょうか。

よく耳にする言葉ではありますが、実際のところその詳細は曖昧にしか捉えられていないのが現状です。

定義に関しては多少の言葉の違いもありますが、おおまかには心臓と血管の働きによる酸素の運搬能力のことを指しています。

心臓が収縮することで血液が押し出されて全身へと運搬されていきますが、その能力が高いほど、より効率的にたくさんの量の酸素を全身に回して、エネルギーを生み出すことができるというわけです。

つまり、全身持久力を高めるということは、心臓を鍛えることと同義と言っても過言ではないのです。

では、全身持久力を高めると、どのような恩恵を受けることができるのでしょう。

さまざまな効果が期待できますが、ここでは次の三つを代表として挙げます。

1:基礎体力の向上

2:生活習慣病の予防

3:肥満の改善

「基礎体力の向上」に関しては、みなさんもイメージしやすいところでしょう。

単純に動くことのできるキャパシティーが増えるので、活動量は増加します。

「生活習慣病の予防」と「肥満の改善」についてはリンクする内容でもあるのですが、脂肪の消費がポイントです。

全身持久力を高めるためには有酸素運動を行うのが効果的ですが、そのエネルギー源となるのが脂肪であり、有酸素運動をするほど脂肪の燃焼率は高まります。

また、心筋梗塞などの血管の不良が原因となる疾患の場合は、コレステロールが血管内部に付着して流れが滞るために生じますが、運動による心臓の拍動により血管が動くため、それによって付着したコレステロールが剥がれます。

結果、血管の状態がきれいに保たれて、スムーズな血液循環に貢献しているのです。

手軽に取り組みやすいのも魅力の一つで、全身持久力を高める運動はたくさんの種類があります。

次の章で、詳細について説明していきましょう。

「エアロビクス」の正体とおすすめの運動

「エアロビ」と略されることも多いこの言葉ですが、有名なところとしては、糖尿病と戦いながら世界で活躍した元エアロビクスダンス日本代表の大村詠一選手がいます。

大村選手が取り組むエアロビクスはダンス形式の競技ですが、エアロビクスを日本語訳すると「有酸素運動」と言い換えることができ、ここで述べるエアロビクスはこちらのことを指します。

スポーツジムでもエアロビクス運動は推奨されており、トレーニングメニューの中に組み込まれていますが、簡単に私たちの生活の中に取り入れていくこともできるので、いくつか紹介していきましょう。

①ウォーキング・ランニング

言わずと知れた、有酸素運動の代表です。

場所を選ばずに取り組むことができ、長時間行うほど脂肪燃焼効果も高まるため、ダイエット効果も高く健康維持のための運動として普及しています。

そんなウォーキング・ランニングですが、取り組む際に意識したいポイントがいくつかあります。

1つ目が、1回で20分以上の運動時間を確保することです。

有酸素運動を行う際のエネルギー源は糖質と脂肪ですが、20分を境にエネルギー効率が脂肪の方が高くなり、よりたくさんの量を燃焼することができます。

もちろん、20分以下でも脂肪は燃焼されていますが、より高い効果を得るためにも20分を目安にしてみましょう。

体重65kgの男性の場合、30分のランニングで約380kcalを消費することができます。

下のサイトから、計算も行えます。

ジョギング・ランニング・マラソンのカロリー計算

 

2つ目は、起伏のあるコースで取り組むことです。

特に、登り坂では平地と同じペースでもより多くの負荷が身体にかかることになり、より全身持久力を高めやすくなります。

身体は運動する環境や負荷に適応しようとする特性があるため、日常的に取り組めば、平地での運動が楽に感じられるようになるのです。

マラソンに取り組む方はもちろん、サッカーやバスケットボールなど、長時間走るスポーツを行う選手も冬季の基礎作りとして取り組みたいですね。

②水泳

こちらも、代表的な有酸素運動として多くの人が取り組んでいます。

特に、高齢者の運動として推奨されていますが、なぜ高齢者が取り組みやすいのでしょうか?

これには、水中運動ならではの特徴が関係しています。

水中では浮力によって身体が浮くことで、水平姿勢を取って泳ぐことになりますが、これによって全身が心臓レベルの高さになります。

全身が心臓レベルに位置することで、立位の際は重力の影響で下肢に溜まりやすかった血液が心臓へと戻りやすくなり、結果として静脈還流量が増えて、力強い心臓の拍動が促されるのです。

1回で心臓から送り出される血液の量が増加するため、陸地と同じ強度の運動に取り組む際も、より少ない心拍数で必要な全身の血液量を確保することができます。

これによって心拍数が上がりにくいため、心拍数を上げるとリスクの大きい高齢者に有効な運動だと言われているのです。

また、水中では酸素を取り込むことができないため、呼吸が努力呼吸になり、横隔膜などの呼吸筋を鍛えるという効果もあります。

呼吸筋を鍛えることで体内の酸素循環が改善されるため、水泳が全身持久力の強化に有効だと言えるでしょう。

体温の上昇を抑え身体への衝撃も少ないため、怪我をしている中でも体力の低下を防ぎたいプレーヤーや、マラソン選手の夏場のトレーニングに取り入れたいところです。

消費カロリーについては、下のサイトを参考にしてみてください。

水泳シミュレーター

③縄跳び

縄跳びは大人にはあまり馴染みがない運動ですが、小学校などでは持久力を高める運動として定着しています。

連続した跳躍運動がポイントで、全身を使って行う運動としては理想的だと言えます。

ウォーキング・ランニングや水泳とは違い、場所を取らないのが最大の魅力で、縄を準備することができればすぐに取り組めるのもメリットですね。

跳び方もさまざまですが、おすすめしたいのが駆け足跳びです。

その名の通り、その場で駆け足をしながら縄を跳んでいくのですが、走りの動作と似ているため、テンポを変えることで強度も変わります。

取り組む時間としては、10分が目安です。

連続して行えばかなりの運動量となるので、ある程度の有酸素運動に慣れてから取り組むようにしましょう。

縄跳びは、ボクシングやレスリングなどのラウンド種目の選手が実戦をイメージして取り組むことが多いです。

消費カロリーも多く、短時間での運動を好む方は取り組みたいメニューと言えます。

縄跳び(100~120回/分)消費カロリー/カロリー一覧・検索ならイートスマート

 

他にも、ダンスやサイクリングもエアロビクス運動としては最適です。

自分が取り組みやすく、続けやすい運動を探してみましょう!

走りを強化する「インターバル走」

ここからは、フルマラソンなどの長距離走に活かすことができるトレーニングを紹介していきます。

先ほどまで解説を行ってきたエアロビクス運動が全身持久力の向上のための基本となりますが、これに加えて競技的な能力を求める場合はそれだけだと不足です。

そこでおすすめしたいのが、「インターバル走」です。

陸上界では広く普及している有名なトレーニング法ですが、実際のところ、中身についてはさまざまな捉え方があり、メニューも多様になっています。

基本的なインターバル走の形は、速く走る疾走期と遅く走る緩走期を繰り返し行うことです。

このベースがある上で、疾走期と緩走期に走る距離・ペースを調節したり、本数を調節して実施者のレベルに対応させます。

メニューの幅が広い分、いざ取り組もうとしても、慣れていないと困惑しがちです。

形ばかりに囚われてしまうと、十分な練習効果も得ることができません。

そのような悲しい結末に陥らないために大切なことは、インターバル走で鍛えるのはどのような能力かを理解することです。

インターバル走は、運動中に体内に摂取できる酸素の最大量(最大酸素摂取量:VO₂MAX)を増加させることが目的のトレーニングです。

インターバル走に馴染みのない方は、最初の方でスピードを上げすぎてしまい後半にペースが落ちてしまうことがよく見受けられますが、そのようなトレーニングでは練習効果を全く得ることができないと言えるでしょう。

VO₂MAXを高めるために最適なペースは、体感的には「きついけど何とか練習の最後まで走り切ることができるペース」です。

取り組んでみると実感できるのですが、最初は遅く感じていたペースも、後半になるにつれて徐々に余裕が無くなっていきます。

これは、運動時間の増加でエネルギーの需要と供給が均衡状態に近づき、酸素を欲する状態へと体内環境が変化していることを意味しています。

この状態こそが持久力の向上のために必要で、定常状態に近づけようとして、より多くの酸素を体内に摂取できるようになるのです。

以上のことからも分かるように、インターバル走においては適切なペース設定が鍵を握っていると言えます。

ペース設定に役立てたい「脈拍」

適切なペースの設定が非常に重要なインターバル走。

その際に役に立つのが脈拍で、これを元にして疾走期と緩走期のペースと時間の目安が見えてきます。

インターバル走では、疾走期に160~180回/分のスピードで走り、緩走期に120~130回/分ペースでつなぐことが理想とされているので、このペースを基準に据えます。

距離についてですが、適切な疾走期のペースでトレーニングが行われていれば、疾走期の時間:緩走期の時間=1:1で上記の脈拍に近づくので、それに応じて決定していきましょう。

具体的な例を挙げるとするならば、陸上のトラックを練習場所に据えて、1周400mの疾走期+200mの緩走期を1セットとして5セット繰り返すメニューが、トレーニング初期の精神的な負担を考えても十分に行うことができて、練習効果の高いメニューです。

慣れてきたら、セット数を増やしたり、1000mの疾走期+400mの緩走期を3セットなど、変更を加えて強度を上げていきましょう。

陸上のトラックの場合は距離も正確で取り組みやすいので、インターバル走にはもってこいの場所と言えます。

さらに上級者向けのトレーニング「LT値走」

インターバル走に加えて、さらなるレベルアップを求める人がぜひ取り組みたいのが、「LT値走」です。

LT値は、正式名称を「作業性乳酸閾値」といい、LT値を超えると急激に体内の乳酸値が高くなります。

乳酸は疲労物質だと以前は言われていましたが、実際はエネルギー生成にも大きく関わっており、一概に疲労物質だと言うことはできません。

乳酸が体内に蓄積し始めているのは、ミトコンドリアが乳酸の分解を充分に行えなくなっているというシグナルで、つまりエネルギー生成が運動に追いついていないことを意味しているのです。

そのため、LT値付近でのランニングを行うことで、体内のエネルギー生成の効率化を図り、ランニング強度の向上に耐えられる身体にするのがLT値走の目的になります。

インターバル走では、「きつくても練習の最後まで続けることのできるペース」が最適だと述べましたが、LT値走の場合は、体感的に「少しきついが余裕を持って終えることができるペース」が理想です。

また、LT値走は行う時間が非常に重要で、練習では20分~30分以内の間で設定を行いましょう。

エネルギー生成から考えると60分以上走り続けることが可能なのですが、身体への負担が大きすぎてその後の練習にも悪影響が及ぶ危険性が高いため、やりすぎには注意してください。

初心者の場合は、少し余裕を持ったペースからスタートして、スピードに乗ってきたらLT値のペースに上げる方法もおすすめです。

「ビルドアップ走」と言われますが距離に対して抵抗がある場合にも取り組みやすく、徐々にスピードが上がる感覚が心地良く、走る楽しさも味わいやすいため、ぜひ取り入れてみましょう!

筋持久力を知る

ここからは持久力のもう1つの側面、「筋持久力」に焦点を当てて考えていきましょう。

全身持久力は何となくイメージしやすいですが、いざ筋肉をピックアップして考えてみると、案外馴染みがないことに気付きます。

身体を動かすのは筋肉ですが、その特性についてはあまり広まっていないのが現状です。

筋肉を鍛えることと言えば、ウエイトリフティングやラグビーなどパワー系の種目に取り組む選手が行うことだと認識している人も大勢いますが、筋肉を鍛えるといっても大きくするだけではありません。

トレーニング方法によっては持久的な能力も高めることができるのです。

2種類の筋繊維を知る

まず始めに、筋肉の構成について理解していきましょう。

例として白身魚と赤身魚を挙げます。

白身魚といえば、ヒラメやサケ、鯛、赤身魚はマグロやイワシといった種類の魚を挙げることができますが、同じ魚類なのにも関わらず、なぜ身の色に違いが生まれるのでしょうか?

それは、彼らの行動形態にヒントが隠されています。

白身魚のヒラメやサケは、普段は物陰でじっとしていますが、危険が迫った時は素早く逃げる必要があります。

対して、赤身魚のマグロやイワシは回遊魚であり、常に動いていなければ死んでしまいます。

これは人間の筋肉にも当てはめることができ、白い筋肉が速く動くために備わり、赤い筋肉が長く動くために備わっているのです。

正式名称だと、白い筋肉が収縮速度が速い速筋繊維(fast-twitch:FT)で、赤い筋肉が収縮速度が遅い遅筋繊維(slow-twitch:ST)で構成されています。

速筋繊維はさらに2つに細分され、FTa繊維とFTb繊維に区分されることもあります。

FT繊維とST繊維では持っている能力が大きく異なり、FT繊維の場合は解糖によってエネルギー源であるATPを産生する能力(解糖能力)に優れます。

対してST繊維では、酸化的リン酸化によってATPを産生する能力(酸化能力)に優れており、両者の特性に大きな違いがあることは明らかです。

この特性の違いにより、FT繊維は収縮速度が速い分疲労耐性が低く、ST繊維は収縮速度は遅いが疲労耐性が高いといった違いが現れます。

持久系の種目の場合は、ST繊維の働きを高めることが重要であり、そのためのトレーニングを優先して行うべきなのです。

筋繊維の割合は変わらない!?

2種類の筋繊維の存在が分かったところで、きっとこのように考える人が多いでしょう。

「トレーニングで遅筋繊維の割合を増やしていけば持久力が上がる!」

確かに、体内の遅筋繊維の割合を増やしていければ、今までよりも格段に持久力が向上しそうですね!

しかし、残念なことに、速筋繊維と遅筋繊維の割合は生まれつき決まっているものであり、トレーニングによって速筋繊維が遅筋繊維に置き換わることはありません。

11人の被験者が20年間に渡って持久系のトレーニングに励んだ実験がありましたが、ST繊維の割合は全く増加しなかったという報告もあります。

もちろん、多少の変化はありますが、大幅な変化を望むことはできないのです。

それでは、結局トレーニングをしても全く意味がないのでしょうか?

いいえ、決してそんなことはありません。

FT繊維とST繊維の割合は変わりませんが、それぞれの絶対量を増やすことは可能ですし、刺激を入れて働きを改善させることが筋持久力の向上につながります。

また、FT繊維に関しては、FTa繊維とFTb繊維がトレーニングで置き換わることが分かっています。

FTa繊維のほうがFTb繊維よりもST繊維の特性に近いため、持久系トレーニングで増やすことが可能です。

先天的な側面もありますが、悲観することなくトレーニングに励みましょう!

遅筋の割合が高い部位を鍛える!

筋持久力の向上のためには遅筋を鍛えることが重要であることが分かりました。

では、私たちの身体の中で遅筋の割合が高いのはどの部位なのでしょうか?

先ほどの回遊魚の例を考えると理解しやすいのですが、長時間負荷のかかる部位が必然的に多くの遅筋で構成されていることになります。

人間の身体だと、背部に位置する脊柱起立筋や、ふくらはぎにあるヒラメ筋などが姿勢の保持に大きな役割を果たしているため、遅筋の割合が高いです。

そのため、これらの部位に刺激を入れて鍛えていくことで、効率的に筋持久力を高めることができるでしょう。

脊柱起立筋

体幹部の安定のために欠かせない脊柱起立筋。

大まかには、脊柱に近い部位から、棘筋、最長筋、腸肋筋の3つの筋から構成されています。

デスクワークを長時間行って背中が痛くなることがありますが、これも脊柱起立筋が疲れているというサインです。

鍛えることで腰痛の予防にもつながるので、現代人が率先して鍛えるべき筋肉とも言えるでしょう。

いくつか、トレーニングのメニューを紹介していきます。

①バードドッグ・クランチ

1:四つん這いになり、腰と膝、肩と手首が同じ位置にくるようにして、背中をまっすぐに保つ

2:足と手を伸ばして、地面と平行になる状態まで上げる

3:数秒キープしたあと、肘と膝がくっつくまで引きつける

4:再び手と足を伸ばしていき、同じ動作を繰り返し行う

 

脊柱起立筋の代表的な筋力トレーニングです。

手と足を伸ばしたままキープするやり方も効果的で、背中の辺りに効いてくる感覚を実感することができます。

自重だけで行える手軽さも魅力なので、テレビを見ながらや家事の合間など、スキマの時間やスペースで行っていきましょう。

②バッグエクステンション

1:床にうつ伏せになる

2:ゆっくりと状態を反らし、床から状態を上げていく

3:上げたところで数秒間キープし、上体を下ろしていく

 

こちらも手軽に取り組める脊柱起立筋のトレーニングです。

背筋の動作と似ていますが、ゆっくりとした動きで取り組むことがポイントで、そうすることで脊柱起立筋に刺激を与えることができます。

応用としては、手を前方に伸ばして行うスーパーマンという種目もあり、こちらも背部を中心とした筋肉に効果的ですので、ぜひ取り組んでみましょう。

 

(図)スーパーマンの姿勢

 

③デッドリフト

1:両手を伸ばしたままダンベルを持ち、両足を肩幅に開いて立つ

2:背中を伸ばしたまま膝を曲げ、状態を約45°前傾させる

3:腰を前方に移動させながら上体を起こしていく

 

デッドリフトは主に臀部を鍛えるトレーニングとして有名ですが、背中をまっすぐに保つことが重要であるため、脊柱起立筋も鍛えることができます。

姿勢の保持がしっかりと行える強度が重要であるため、無理な負荷をかけて行わないように注意しましょう。

股関節の屈曲・伸展との連動で刺激が入るので、ランニング動作にも活かしやすく、より動的な動きの中でトレーニングを行いたい方にはおすすめです。

ヒラメ筋

ふくらはぎに位置しているヒラメ筋。

腓腹筋と併せて下腿三頭筋と呼ばれ、下半身の安定のためには欠かせない筋肉です。

腓腹筋が外側にあると表現するならば、ヒラメ筋はその深層部にその名の通りヒラメのように扁平な形で位置しています。

腓腹筋が速筋繊維の割合が高いのに対して、ヒラメ筋は遅筋繊維の割合が高いので、長距離系の種目でも重要な役割を担っているのです。

また、遅筋繊維の割合が高いのにも関わらず、ヒラメ筋は大きな力を発揮できる筋肉でもあります。

これには筋肉の形が関係しており、羽状筋と呼ばれる構造がポイントです。

羽状筋の場合は太くて短い筋繊維が斜めに並んでおり、筋の収縮力の伝わり方は遅いのですが、筋の断面積が大きい分、大きな力を発揮できます。

適切にトレーニングを行うと大幅なパフォーマンスの向上も期待できるので、強化に取り組んでみましょう。

①カーフレイズ

1:足を肩幅に開いてまっすぐ立つ

2:かかとを床からゆっくりと上げていく

3:かかとをゆっくりと下ろしていき、床まで完全に下ろさずにキープする

 

ヒラメ筋の代表的なトレーニングであるカーフレイズ。

初心者の場合は重りを持たず、かかとを上げ下げするだけで充分なトレーニング効果を得ることができます。

ポイントは両足が同じリズムで動くようにすることで、左右のバランスが悪いと片足に負荷がかかりすぎ、かえって怪我のリスクが高まってしまいます。

バランスよく動かすことができているかを、常にチェックしておきましょう。

②スタンディング・レッグカール

1:壁に手を添えて、壁から遠い方の足を床から離す

2:膝が前に出ないように気をつけながら、かかとをお尻に引き付ける動作を繰り返し行う

 

下腿三頭筋を鍛えるだけでなく、ランニングの際の足運びについても修正が行えるメニューです。

ランニングの際のヒラメ筋の筋発揮は重要ですが、あくまでも補助的に力を発揮できるフォーム作りが重要だと言えます。

というのも、下腿三頭筋が主導でパワーを生み出すと、過剰な負荷で筋肥大が起こりやすく、重くなってしまいランニングの効率が下がってしまうからです。

正しいランニングフォームの獲得のためにも、スタンディング・レッグカールを行う際はランニング動作とのつながりを意識しながら取り組みましょう。

筋肥大を防ぐために

ヒラメ筋の項でも少し触れましたが、筋持久力の向上のためには筋肥大を防がなくてはいけません。

筋パワーは筋肉の断面積に比例しており、筋肉を大きくすれば力強さが手に入りますが、その分たくさんのエネルギーが必要となり、余分にエネルギーを消費してしまうリスクが高まるからです。

そのため、ウエイトトレーニングに取り組む際も、筋肥大を起こさない範囲での適切な強度を理解しておく必要があります。

そこで参考にしたいのが、RM法を用いた強度の設定です。

RM法

最大筋力を基準として、ウエイトトレーニングの効果を分類した指標です。

最大の力で1回行うことができる負荷を「1RM」とし、回数ごとにトレーニングによって得られる効果が異なることが分かりやすくまとめられています。

例えば、5回なら行うことができる負荷(MAX5回しかできない負荷)は「5RM」と表すことができるというわけです。

では、筋持久力の強化のためにはどのぐらいの負荷が適切なのでしょうか?

多少の誤差はありますが、一般的には15RM以上が好ましいとされています。

つまり、あまり負荷が高くないウエイトで繰り返す行うことが重要なのです。

反対に、筋肥大を起こすのは4~12RMの範囲と言われており、筋持久力の回数との見極めが難しい部分ではあります。

筋持久力の向上を狙ったウエイトトレーニングを行う場合は、正しい負荷の設定に細心の注意を払いましょう。

ウエイトトレーニングは長距離界のトレンド!?

正しい負荷で正しい回数行えば筋持久力の向上につながるウエイトトレーニングですが、以前は筋肥大の恐ればかりに目が行き、陸上の長距離界ではタブーとされてきました。

しかし、正しく行えばその分の効果を得て走りにつなげることができるとあって、世界のトップ選手たちも身体づくりのためにウエイトトレーニングに取り組むようになりました。

先日の福岡国際マラソンで日本歴代5位の2時間7分19秒をマークした大迫傑選手も、アメリカのナイキ・オレゴン・プロジェクトに所属し、ウエイトトレーニングに取り組んで結果を残した人物の1人です。

地道なトレーニングのおかげで細くしなやかな筋肉に磨きがかかり、フルマラソンでも後半まで大崩れしない走りを手に入れました。

大学駅伝界では、出雲駅伝を制して「スピードチーム」として注目を集める東海大学も、ウエイトトレーニングに日頃から励んでいます。

成果が上がってきており、今後ますます普及していくことが予想されているトレーニングなのです。

継続は力なり!

今回は全身持久力と筋持久力について解説してきました。

両者ともに私たちの生活を豊かにしてくれる能力ですが、身につけるためには継続が不可欠です。

私たちの身体は、体内への刺激に対して反応しその能力を向上させていきますが、放っておくとすぐに元の状態へと逆戻りしてしまいます。

今回挙げたトレーニングも例外ではなく、「1回行えば劇的に力が身につく「魔法のトレーニング」ではない」ことはしっかりと理解しておきましょう。

持久力の向上に関しては、とにかく積み重ねが命です。

無理をせずに続けられるトレーニングを探していきましょう!

 

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