カラっとした爽快な季節だとトレーニングもはかどります。
しかし、梅雨の時季や冬はトレーニングをするにもジメジメしたり、寒かったりの不快な気候で、なかなか気分も上がらない、そんな方も多いのではないのでしょうか?
そんな気持ちに引っ張られるように、疲れが身体に残りやすくなるのもこの季節。
朝起きたら身体がだるい、関節が痛む、寒気がする・・・など、さまざまな症状が現れやすいです。
このような症状が続いてしまっては、トレーニングの効果も上がりません。
せっかくの運動も台無しになってしまいますね。
そこで、今回から季節の変わり目に気をつけたい体調管理について解説をしていきます。
最初は、筋の張りを取り除いて動ける身体を作るセルフマッサージについてです。
疲労にうまく対処しながら、良好な健康状態を築いていきましょう!
そもそも「疲労」ってなんだ?
「最近、疲れが取れなくて・・・」と嘆いている人に出会ったことがあるでしょう。
なんとなく身体がだるかったり、筋肉痛や身体の節々が痛んだりと、一言に疲労といってもさまざまな種類があります。
細かく分類していけばキリがありませんが、今回は大まかに次の3つに分類しました。
①身体内部から生じる疲労
②筋・腱から生じる疲労
③精神的な部分から生じる疲労
①身体内部から生じる疲労
内臓機能の低下が原因となっていることが多いタイプの疲れです。
食べ過ぎ、飲み過ぎなどで消化器系に負担がかかっている時は、身体の奥の方がだるくなったり、キリキリと痛んだりして不快感が生じます。
慢性化した場合が非常に厄介で、身体の不調が数週間単位で続き、それに伴って体力も低下します。
いわゆる「夏バテ」がまさにこの状態で、冷たい水分の「がぶ飲み」で胃に負担がかかったり、食欲不振によるエネルギーの不足で機能が低下してしまうのです。
自分の実力に見合わない過度なトレーニングを行った場合にも、内臓機能は低下します。
特に、持久系種目での過度なトレーニングは循環器系に大きな負担がかかりますので、自分に合った負荷を考慮してから運動を行いましょう。
②筋・腱から生じる疲労
激しい運動をした後に、筋や腱が痛んだりだるくなったりしたことはありませんか?
この現象にはいくつかの要因が考えられます。
1つ目は、筋・腱の炎症です。
運動によって細かい傷が筋や腱に入り、回復する際に炎症を起こして、痛みを引き起こす物質であるヒスタミンやセロトニンが筋膜を刺激すると言われています。
いわゆる「筋肉痛」と呼ばれる現象であり、運動不足の人が特に経験するでしょう。
しかし、筋肉痛は決して悪いことではありません。
筋肉を修復している際に生じる現象ですので、一見疲れているように感じますが、実は筋が強化されているのです。
心地よい筋肉痛は成長しているサインですので、喜んで受け入れましょう!
筋・腱の疲労の要因、2つ目は自律神経の乱れです。
自律神経の中枢は身体の器官や体温の調節を行いますが、運動により大きな負荷がかかると機能の調節に乱れが生じます。
その際に、脳がダメージを受けて疲労が起こるとされているのです。
筋がだるいといった感覚は、神経系がうまく機能していない可能性が考えられます。
普段からハードなトレーニングを行っている人の場合は、メニューの量を減らして、速めの動きを取り入れることで反応を改善していくのも1つの手段です。
③精神的な部分から生じる疲労
気持ちが憂鬱で何もやる気が起きないような、そんな感覚に陥ることがありますか?
精神的な疲労は、身体の見えない所が疲れているサインという風に捉えることもできます。
先ほども述べた自律神経の乱れが気分の落ち込みを招くこともありますし、原因は人によってさまざまです。
しかし、身体は元気だけど気分が乗らない時に無理をするのは控えましょう。
自覚はないですが思わぬ部分に負担がかかっており、運動中に重大な怪我や疾患へとつながってしまう場合があります。
「どうしても気分が乗らないな・・・」
そんな時は自分の気持ちに正直になり、思い切ってリフレッシュすることも大切です。
手軽にできるセルフマッサージ
では、疲れを感じたときにどのように対処すれば良いのでしょうか?
さまざまな対策がありますが、その一つとして自分でできるマッサージ法を学んでいきましょう。
理想は他の人にマッサージを行ってもらうことですが、専門店などに行くと費用も高く、頻繁に通うことが難しい場合もあります。
自分で身体の状態を把握して、ある程度の対処ができるようになると、翌日に疲労を残さないことが可能です。
上記の3つの疲労別でマッサージ法を押さえていきましょう!
身体内部から生じる疲労
内臓機能の低下が見られる場合は、身体のツボを刺激することで改善が期待できることがあります。
お腹周りをほぐすことで胃腸の機能改善の期待ができるので、食欲が落ちたり身体のだるさが気になる時に試してみましょう!
腹部
上の図は、腹部のマッサージ法を端的に表したものです。
おへそを中心にして、拳を作って円をかくようにほぐしていくことで、腸の活動の促進が期待できます。
グッと押し込み過ぎるのではなく、表面を軽く刺激するぐらいの力で滑らせましょう。
また、表皮を軽くつかんで上下にさする方法も、内臓機能の促進に効果があります。
これも強くつかみ過ぎるのではなく、優しく持ち上げるようにつかみ、ゆっくりと上下に動かすと無理なくほぐすことができます。
どちらの手技でマッサージする場合も、オイルやローションなどで表面を滑らかにしてから取り組むように心がけましょう!
お風呂上がりは深部温度も上がり、活動が活発になっているので最適です。
筋・腱から生じる疲労
筋や腱といっても身体にはさまざまな部位があります。
ほぐす方法も部位によって違い、覚えるのもなかなか大変です。
今回は基本の手技を覚えて、セルフケアの時に役立てられるようにしましょう!
足底部
足部は地面と接する面であるため、運動時には大きな負荷がかかり、運動パフォーマンスに直接的な影響を与えます。
細かい筋や骨が多いことが特徴で、足部を痛める場合はこのような小さな部位が炎症を起こすことが主です。
足背部
足背部は、短指伸筋や短拇指伸筋といった足指を伸ばす筋肉、背側骨間筋という足指を外転・屈曲させる筋肉があります。
強い踏ん張りを必要とするバスケットボールやハンドボールといったスポーツで負担がかかりやすく、疲れてくるとバランスを崩して転倒することも多くなってしまいます。
対処としては、まずは図のように骨と筋を足首の方向へ軽くなでるように拳を滑らせましょう。
軽い刺激を与えて、ほぐれてきたと感じたら少し圧を強めて、指の第二関節で揉むような形でほぐしていきます。
最後に、手の平全体で足背部を包み込むように覆い、ゆっくりと圧迫していきましょう。
ポイントは全体的にほぐしていくこと。
細かい筋が多いため、強すぎる刺激がピンポイントに注がれるとかえって炎症を悪化させることもあります。
指先で強く押すことは控えて、指腹部を使うように心がけましょう。
足底部
足底部には、短指屈、短拇指屈筋といった足指を曲げる筋肉と、虫様筋、底側骨間筋という足指を内転・屈曲させる筋、拇指外転筋という足指を外転屈曲させる筋があります。
もちろん、これらの筋も入念なケアが必要なのですが足底部の場合、もっとも重点的にケアしたいのは、踵から足指にむかって足裏を覆っている足底筋膜です。
初心者ランナーが多く陥るのが足底筋膜炎で、足底筋膜が足裏にかかる負荷に耐え切れず発症してしまいます。
オーバーユースが原因となることが多いので、一番の対処法は無理をしないことですね。
しかし、トレーニング熟練者でも足底筋膜炎のリスクは常にあります。
悪化してしまうと最悪の場合、一生治らないこともありますので、毎日マッサージは欠かさずに行いましょう。
足底筋膜のケアで重要なのが、アーチの修復です。
いわゆる「土踏まず」のことで、アーチが崩れることで偏平足になり足底部だけではなくふくらはぎや太腿の障害を発症するリスクが高まります。
アーチは、足裏から見て十字型に筋が走行して構成されているので、ほぐす際は縦方向と横方向に回すような動きを取り入れましょう。
足背部同様、薄い筋で構成されていますので強すぎる刺激は避け、一回のマッサージは5分以内に抑えます。
アキレス腱・足首・下腿部後部
アキレス腱は下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)と踵をつなぐ腱です。
下腿三頭筋は足関節の底屈に作用し、ジャンプ動作やランニング動作のバネを生み出します。
スポーツだと、このバネが大切な種目が多いため、機能が低下するとパフォーマンスが著しく低下することもあるのです。
多いのが下腿三頭筋が柔軟性を失うことによるアキレス腱の硬化で、柔軟性を失ったまま走り回るとアキレス腱が耐え切れずに部分断裂を引き起こします。
一度大怪我をすると完全復帰が難しい部位なので、少しでも痛めることがないように注意しましょう。
アキレス腱
アキレス腱マッサージの基本は、指先で軽く上方向に揉んでいくことです。
アキレス腱を両指でつまむようにして、少しずつ圧をかけていきます。
ただし、これも長時間の圧迫は避けて、毎日少しの時間でいいので行うようにしましょう。
足首・下腿三頭筋
下腿三頭筋のマッサージは、最初に手の平全体で膝裏の方に向かって擦ります。
その後、ゆっくりと全体的に揉みほぐしていきましょう。
毎日行うマッサージはこれで十分ですが、局地的に傷みやハリがある場合には指先での圧迫を加えていきます。
腓腹筋の内側と外側の間に親指を当て、間をほぐすように親指で押していきましょう。
下腿三頭筋のケガで多いのがシンスプリントです。
脛骨や腓骨に強い負荷がかかった状態で運動を続けると発症し、走る際だけではなく安静時にも強い痛みを伴います。
骨膜が炎症を起こすと症状はさらに悪化し、完治まで長期の離脱を余儀なくされることも・・・。
そして、悪化を招くのが間違ったマッサージなのです。
一番やってはいけないのが、脛骨を直接指で押すことです。
骨膜を痛めることにつながりますので、側部を圧迫する時はヒラメ筋に触れてほぐすようにしましょう。
親指以外の4本の指で優しくさわり、円を描くようにしながら刺激を与えると、丁度良い刺激が筋に伝わります。
大腿部前部・後部
大腿部前部
大腿部の前側は、大腿直筋・内側広筋・外側広筋・中間広筋の4つから構成されています。
ダッシュやジャンプ、キックやターンなど多岐に渡って働く部分であり、ブレーキによって膝の伸展が多い種目で疲労が蓄積しやすいです。
大腿直筋・内側広筋・外側広筋、それぞれのラインをなでるように辿るのがポイントです。
前側の強い張りがどうしても気になる時は、膝上あたりの少し太くなっている部分を重点的にほぐすと、下肢の機能の改善が期待できます。
大きな筋肉であるため、指先で圧迫しても一部にしか効果が伝わらずマッサージの効率が上がりません。
手の平を使って全体を強く押すようにしましょう。
大腿部後部
大腿部後部の代表的な筋は、ハムストリングスと呼ばれる筋群です。
ダッシュやジャンプの動作に大きく関わっており、スポーツ選手にとって絶対に怪我をしたくない部位でもあります。
疲労が蓄積されると筋が固くなり、肉離れを起こしやすくなるため、運動後は常にケアを行うことが予防につながります。
左右で筋の状態に差があるとバランスが崩れてさらに怪我のリスクが高まるので、左右差が生まれないように気をつけましょう。
手の平全体で包み込むように握り、ほぐしていくのがポイントです。
前部と同様に大きな筋ですので、指圧よりはより広い面で圧を加える方が効果を期待できます。
きりで穴を空けるように、左右の手で覆ってさするとより筋の弛緩効果が高まるので、両方の手で入念に行うようにしましょう!
殿部
臀部には細かい筋が多数あり、股関節の動きに連動して働きます。
また体幹を支える役割も担っており、コンタクトスポーツでは当たり負けしないためにもほぐして機能を保っておきたい部位です。
現代人は椅子に座って作業をすることが多く、臀部の筋が固くなりやすいと言われています。
臀部の機能が低下すると、体幹を支えるために腰に大きな負担がかかり慢性的な腰痛へとつながることもあるので、スポーツ後だけではなく毎日欠かさずマッサージをしましょう。
臀部はとても大きな筋ですので、手の平だけでは十分なケアが厳しいです。
そこで、テニスボールを用いて刺激を与えましょう。
特に、上の図が示す大殿筋や中殿筋の箇所にボールを当てて、転がしたりゆっくりと圧をかけていきます。
深部まで刺激を届けるために、少し強めに圧迫をしましょう!
精神的な部分から生じる疲労
気持ちが疲れやすいのもこの季節。
原因はさまざまですが、脳への血流不足も1つの原因として考えられます。
そんなときは、首のコリをほぐしてあげると、頭がさえて活動的になれるかもしれません。
頸部
首の筋肉で重要な役割を担うのが、胸鎖乳突筋です。
首をねじったり頭を下げて頷く動作に働くため、デスクワークが多い現代人にとって負荷のかかりやすい筋だと言われています。
気分の落ち込みなどが目立つときは首が張っているケースも多く、放っておくと慢性的な肩こりにも繋がってつらい生活を送らなくてはいけなくなることも。
頭がぼーっとする感じが続く人は、気付かないうちに慢性的な張りを抱えていることが多いのです。
図のように左右に走っている筋ですので、ケアは片方ずつ行います。
片方にひねって胸鎖乳突筋を浮き上がらせて、親指と人差し指でつまんで指の腹で圧をかけましょう。
そして、上下に往復して筋肉の端から端までをほぐしていきます。
首の張りがひどい人は首の付け根にしこりのようなものができているので、そこは特に入念にほぐしましょう。
しかし、強い圧をかけるのではなくて、じわじわと圧をかけて痛め付けないように注意が必要です。
まとめ
今回は、疲労の要因について考え自分でできるマッサージについて原因ごとに解説を行っていきました。
症状ごとに考えられる原因は違いますが、基本の手技を押さえておけば対処できます。
良いコンディションを保つことが高いパフォーマンスに不可欠なので、毎日のケアは欠かすことがないようにしましょう!
少しの積み重ねが、健康な身体を作るのに欠かせないということを忘れずに。