室内でできる肩こり解消トレーニング

筆者はフリーのトレーナーとして様々なアスリートにトレーニング指導を行っています。

また整体院に勤務する整体師でもあります。

競技の現場で触るアスリートの身体と、整体院で触る患者さんの身体。

両者の筋肉は驚くほどにまったくの別物です

肩がこる身体と、肩がこらない身体

アスリートの身体の特徴

・姿勢が良い

・筋肉が柔らかく厚みがある

・触れると温かい

・固い部位も揉むと容易にほぐれる

整体院の患者さんの身体の特徴

・姿勢が悪い

・筋肉が固く厚みがない

・触れると冷たい

・ほぐすのに時間がかかる

そして本稿のテーマである肩こりです。

辛い肩こりに悩まされて整体院に通い続ける患者さんは多くいらっしゃいますが、アスリートから肩こりの相談を受けたことは一度もありません。

肩こりをなくすヒントは、アスリートの身体から探ることができそうです。

なぜ「肩がこる」のか

姿勢の問題

厚生労働省の「国民生活基礎調査2016年」によれば、日本人の4人に1人が肩こりに悩んでいます。

肩こりは、頭を支える筋肉に慢性的な負担をかけすぎた結果、首~肩まわりの筋肉に痛みや張りを感じるようになった状態をいいます。

私たちの頭の重さは約5kgもあります。

そんな重い頭も、良い姿勢で上手にバランスを保っておけば筋肉や関節に負担をかけずに支えられます。

ところが猫背で長時間デスクワークをしたり、暇があればスマートフォンを覗き込んだりと、悪い姿勢を続けてしまうとどうなるでしょうか。

首~肩まわりの小さな筋肉が、重心のズレた重い頭を必死に引っ張って支え続けることになるのです。

毎日毎日重い頭を引っ張り続けるうちに、筋肉は疲れ果てて動けなくなります。

そしてコリや痛みという形でSOSを発するようになります。

心当たりはないでしょうか。

重い頭は、身体の重心の真上に乗せておく

私が整体院で診ている肩こりの患者さんの大部分は、このバランスを守れない身体になっています。

施術だけでは一時的な緩和にしかならず、またすぐ辛い状態に戻ってしまうのです。

もちろん整体院でも日頃の姿勢管理やトレーニングを指示しますが、実践してくれる患者さんは稀です。

ダイエットと同じで、現状の生活スタイルを変えたくない人が多いようです。

良い姿勢とはなにか

アスリートは立ち姿が違います。

頭からくるぶしまで一本の棒をすっと立てたようにまっすぐ立ちます。

筋肉の力で身体を立てているのでなく、関節のバランスの上に彼ら(彼女ら)は立ちます。

立ち姿勢に力みが入ると脱力が上手く行かず、自由に速く身体を動かすことができないからです。

その意味で、筆者が最も素晴らしい姿勢の持ち主と考えるのはバレエダンサーです。

写真の男性バレエダンサーの姿勢を見てください。

耳(耳垂)・肩(肩峰)・股関節(大転子)・踝の4点を一直線に揃えた状態で右腕を高々と上げています。

そのうえ左手で跳ぶ女性の動きを支えるため、体幹を力強く安定させています。

正しい頭の位置と柔らかい肩があって、初めて背筋を伸ばして右手を上に伸ばす姿勢が取れるのです。

彼らに肩こりなど無縁でしょう。

こうした良い姿勢は、トレーニングによって獲得することができます。

肩がこったら揉む、あるいは体操をする、というのでなく肩こりのない身体に作り変えるほうがずっと快適です。

運動不足の影響

肩こりのもう一つの原因、それは運動不足です。

整体院に通う肩こり患者さんたちの身体は一様に固く、冷えています。

施術していると自分の掌から熱が奪われていくのが分かります。

運動不足だと、なぜ固くて冷えた身体になってしまうのでしょうか?

理由の1つ目。筋肉は体熱を産生する器官です。運動によって筋肉は摩擦熱を生じ、筋肉を通る血液が温められます。

動けば体温が上がるのはこの理由によります。運動が少ないと体温も十分に上がりません。

2つ目。筋肉は血流のポンプの役割もあります。

筋中を走る血管は、筋肉の運動によって圧迫されたり緩められたりしながら力強く血液を流していきます。

力強く流れる血液は、筋肉に溜まった疲労物質も流してくれます。

ところが運かさないままでいる筋肉には疲労物質が滞り、筋肉は固まって動けない「こった」状態になります。

3つ目。運動不足は、筋肉そのものを減らしてしまいます。

筋肉は多くのエネルギーを使う「大食い」の器官です。

人類は飢餓状態でも種を保存するため「余計な筋肉を持たない」省エネルギー遺伝子を備えています。

よって、使用頻度の低いと見なされた筋肉はさっさと削られていきます(廃用性萎縮といいます)。

以上のように動かさないから筋肉が減り、筋肉が減るから血の巡りも悪くなり、血の巡りが悪くなるから冷えてますます固くなるわけです。

時々揉む程度では、ガチガチに凝った肩は良くなりません。

肩こりは、全身の姿勢の悪さや運動不足が招いたものです。

よって、肩こりを解消するには

・ストレッチとセルフマッサージで、緩むべき筋肉を緩めて身体を動かしやすくする

・筋トレで、力を入れるべき筋肉にしっかり力を入れられるよう身体に覚えさせる

・良い姿勢を普段から保つ意識を持つ

これらのことはアスリートだけでなく、快適な身体を手に入れたいと願う人にとっても必要なものです。

これから紹介するエクササイズで血行の良く肩のこらない身体に作り変えていきましょう。

肩こりを解消するエクササイズの実際

では早速、肩こり解消のためのエクササイズを始めましょう。

①姿勢のチェック

最初に姿勢チェックをしましょう。

①壁を背にして立つ

②そのまますり足で後退し、踵が壁に触れたら止まる

③その状態で、後頭部・肩甲骨・臀部が壁に自然に接触するのが「正しい姿勢」です

肩こりの人は、後頭部が壁に触れなかったはずです。

肩甲骨まで浮いた人は、肩こりに加えて肩の痛みや背中、腰の痛みもあるのではないでしょうか。

お尻が浮いた人は腰痛もあるはずです。

今日は頭が前に行ってるな、とか猫背になっているな、とイメージを掴んでおきましょう。

②身体の緊張を取り除く

筋肉の余計な緊張をストレッチで取り除いていきましょう。

お勧めはストレッチポールを用いたエクササイズ「ベーシック7」です。

このシンプルな道具を用いたエクササイズは大胸筋や腹直筋・大腰筋といった姿勢悪化につながる筋肉の緊張を効率的に緩めます。

筋トレ前に準備運動として行うときは、あまり時間をかけすぎないようにします。

逆に疲労感の強い時は、一通りのエクササイズを終えた後に時間をかけて行うと良いでしょう。

ベーシック7を終えたら、再度①の姿勢チェックを試して変化を確認します。

軽症の腰痛や肩こりは、このエクササイズだけでも大分緩和されます。

③姿勢を改善するエクササイズ

①チン・タック(アゴを引き頭の位置を修正するエクササイズ)

前に飛び出てしまった頭を、適正な位置に戻すためのエクササイズです。

基本的な動きを覚えたら、床に仰向けになり後頭部で床を押し込む方法を試してみましょう。

回数は7秒間押し続ける×3セットで良いでしょう。息を止めずに行うようにしてください。

②インバーテッド・ロー(猫背、巻き肩を解消するエクササイズ)

斜め懸垂です。姿勢を整える鍵となるのは背中の筋肉です。

動画では脇を締めるように引いていますが、姿勢を良くする目的で行う場合は脇を90度開いて菱形筋を狙うようにします。

腕で引くのでなく、肩を大きく動かして肩で引くようにしましょう。

12~15回×3セットを行います。

③ダンベル・エクスターナルローテーション(猫背、巻き肩を修正するエクササイズ)

胸を張るのが難しいほど猫背の人は、胸を開くための筋肉を鍛える必要があります。

ためしに「気をつけ」をした状態で、親指を外側にねじって掌を前に向けるようにしてみてください。

胸がぐーっと開いて背すじが伸びる感じがあるはずです。

この動きを担う棘下筋・小円筋という筋肉を鍛えるのがこのエクササイズです。

やや重めのペットボトルを2つ用意し、8~12回×3セットを目安に行います。

動画のように直立するより、軽い前傾姿勢を取って行う方が負荷をより効率的にかけられます。

④ダンベル・シュラッグ(肩こりをセルフ・マッサージするエクササイズ)

肩こりの起こる僧帽筋そのものを刺激するのがダンベル・シュラッグです。

筋肉をポンプのように動かして血行を促進し、疲労物質を押し流すイメージで行いましょう。

15~20回×3セットを行います。

⑤ダンベル・プルオーバー(肩を動かしやすくするエクササイズ)

肩の位置を適正化し、肩を動かしやすくします。

また大胸筋と広背筋をストレッチし、良い姿勢を作る手助けをします。

動画では腰を大きく浮かせていますが、肩周りのストレッチ感を重視するため腰は浮かせ過ぎないようにします。

また肘は軽く曲げた状態で固定し、動作中腕を曲げ伸ばししないように気をつけましょう。

反動を使わずゆっくり行います。深呼吸しながら8~12回×3セットです。

⑥ニー・トゥー・チェスト(大腰筋のトレーニング)

動画では腹筋と説明されていますが、大腰筋という筋肉も鍛えられます。

大腰筋は体幹と下肢を繋ぐ長い筋肉であり、これが強い短縮状態にあると猫背を強め、弱いと姿勢を歪めます。

しっかり動かして、伸び縮みしやすいコンディションに整えておくことが必要です。

両足同時に行う方法もあります。反動を使わず15~20回を3セット行いましょう。

⑦ミリタリー・プレス

頭上にバーベルを押し上げるミリタリー・プレス。

適切な頭の位置、肩の柔軟性、体幹の強さなど、正しい姿勢の条件を満たさないとスムーズな動作が行えません。

バーベル代わりに適当な棒を使って、動画のように鎖骨から頭上まですっと挙げられるかチェックしてみましょう。

頭上に差し上げたとき腕が耳より前に行ったり、腰が反ったりする時は①~⑥のエクササイズをやり込んでみてください。

姿勢を改善するエクササイズへの補足説明

上に紹介した7つのエクササイズのうち、どれが一番大事かと質問されることがあります。

原則として1つのエクササイズに期待できる効果は1つです。

これさえやればOK的な万能種目は残念ながらありません。

一通り試してみてください。

そのほか、

・息を止めない

・ゆっくり目のテンポで大きく動作する

・痛みが感じられる種目はやらない

・周囲の安全に気を配る

・できればご自身の動きを撮影して、動きをチェックしてみる

などを意識して進めていきましょう。

首と肩をほぐすエクササイズ

上の7つのエクササイズで姿勢を整えたら、再度ベーシック7でほぐしておきます。

ベーシック7に加えて、次のようなセルフマッサージを行うと肩こり解消に効果的です。

美しい姿勢を手に入れるエクササイズ

 

これまで悪い姿勢を矯正するエクササイズを紹介してきました。

最後に良い姿勢・美しい姿勢を身体にイメージさせるためにバレエのエクササイズを紹介します。

バレエの基礎練習には即効的に姿勢を改善できる要素が多く含まれています。

一つ紹介しましょう。

①踵を付けて立つ。つま先を可能な限り外向きに開いて「気をつけ」の姿勢を取る

②そのままぐーっと膝を割るように開きながら腰を落とす

③拇指の付け根(拇指球)に体重をのせ、つま先立ちで伸び上がる

④つま先立ちのまま踵を離して足を並行にする

⑤ストン、と踵を下ろす

どうでしょう?

これだけですっと背筋が伸び、不思議と表情も明るくなって前向きな気持ちになりませんか?

おわりに

私の勤務する整体院に酷い肩こりと腰痛で長年通い続けていた60代の女性患者さんがいました。

あるとき彼女がふっと姿を見せなくなりました。

1年ほど経った頃、街中でその女性と偶然お会いしました。

見違えるようにすっと背筋が伸び、目も輝いています。

聞けば、友人に誘われて社交ダンスを始めたところ、肩こりも腰痛も気にならなくなったと。

社交ダンスは

・首をよく動かす事による首周りのストレッチ効果

・良い姿勢を取ったままダイナミックに動き続ける体力

・手足を大きく動かす柔軟性

・鋭い方向転換を繰り返す筋力

・パートナーと支え合うための体幹の強さ

・人から見られたとき美しいと思われる姿勢を保つ意識

など総合的に身体を整えることのできる要素が詰まっています。

良い姿勢を保つには意識付けが必要です。

自分の中に良い姿勢の基準を持ち、自分を客観視すること。

もし歪みが出たら修正できるようにしておくこと。

それを日常の中で繰り返し行っていけば、肩コリとは無縁の快適な身体が手に入るはずです。

生活習慣の誤りが肩こりの原因ならば、生活習慣を変えるまでです。

身体をよく動かす。セルフチェックする。鍛える。ほぐす。

美しい姿勢、カッコいい姿勢を意識した生活スタイルにシフトしましょう。

そうすれば「肩こり?そういえば昔はそういう時もあったかな?」と言えるようになるはずです。

PAGE TOP