持久力向上に取り組む!~筋持久力編~

全身持久力について考えた前回。

前回記事:持久力向上に取り組む!~全身持久力編~

今回は、持久力のもう1つの側面、「筋持久力」に焦点を当てて考えていきましょう。

全身持久力は何となくイメージしやすいですが、いざ筋肉をピックアップして考えてみると、案外馴染みがないことに気づきます。

身体を動かすのは筋肉ですが、その特性についてはあまり広まっていないのが現状です。

筋肉を鍛えることと言えば、ウエイトリフティングやラグビーなどパワー系の種目に取り組む選手が行うことだと認識している人も大勢いますが、筋肉を鍛えるといっても大きくするだけではありません。

トレーニング方法によっては、持久的な能力も高めることができるのです。

筋肉の特性を知り、あなたのトレーニングにも活かしていきましょう!

2種類の筋繊維を知る

まず始めに、筋肉の構成について理解していきましょう。

例として、白身魚と赤身魚を挙げます。

白身魚といえば、ヒラメやサケ、鯛、赤身魚はマグロやイワシといった種類の魚を挙げることができますが、同じ魚類なのにも関わらず、なぜ身の色に違いが生まれるのでしょうか?

それは、彼らの行動形態にヒントが隠されています。

白身魚のヒラメやサケは、普段は物陰でじっとしていますが、危険が迫った時は素早く逃げる必要があります。

対して、赤身魚のマグロやイワシは回遊魚であり、常に動いていなければ死んでしまいます。

これは人間の筋肉にも当てはめることができ、白い筋肉が速く動くために備わり、赤い筋肉が長く動くために備わっているのです。

正式名称だと、白い筋肉が収縮速度が速い速筋繊維(fast-twitch:FT)で、赤い筋肉が収縮速度が遅い遅筋繊維(slow-twitch:ST)で構成されています。

速筋繊維はさらに2つに細分され、FTa繊維とFTb繊維に区分されることもあります。

FT繊維とST繊維では持っている能力が大きく異なり、FT繊維の場合は解糖によってエネルギー源であるATPを産生する能力(解糖能力)に優れます。

対してST繊維では、酸化的リン酸化によってATPを産生する能力(酸化能力)に優れており、両者の特性に大きな違いがあることは明らかです。

この特性の違いにより、FT繊維は収縮速度が速い分疲労耐性が低く、ST繊維は収縮速度は遅いが疲労耐性が高いといった違いが現れます。

持久系の種目の場合は、ST繊維の働きを高めることが重要であり、そのためのトレーニングを優先して行うべきなのです。

筋繊維の割合は変わらない!?

2種類の筋繊維の存在が分かったところで、きっとこのように考える人が多いでしょう。

「トレーニングで、遅筋繊維の割合を増やしていけば持久力が上がる!」

確かに、体内の遅筋繊維の割合を増やしていければ、今までよりも格段に持久力が向上しそうですね!

しかし、残念なことに、速筋繊維と遅筋繊維の割合は生まれつき決まっているものであり、トレーニングによって速筋繊維が遅筋繊維に置き換わることはありません。

11人の被験者が20年間に渡って持久系のトレーニングに励んだ実験がありましたが、ST繊維の割合は全く増加しなかったという報告もあります。

もちろん、多少の変化はありますが、大幅な変化を望むことはできないのです。

それでは、結局トレーニングをしても全く意味がないのでしょうか?

いいえ、決してそんなことはありません。

FT繊維とST繊維の割合は変わりませんが、それぞれの絶対量を増やすことは可能ですし、また刺激を入れて働きを改善させることが筋持久力の向上につながります。

また、FT繊維に関しては、FTa繊維とFTb繊維がトレーニングで置き換わることが分かっています。

FTa繊維のほうがFTb繊維よりもST繊維の特性に近いため、持久系トレーニングで増やすことが可能です。

先天的な側面もありますが、悲観することなくトレーニングに励みましょう!

遅筋の割合が高い部位を鍛える!

筋持久力の向上のためには遅筋を鍛えることが重要であることが分かりました。

では、私たちの身体の中で遅筋の割合が高いのはどの部位なのでしょうか?

先ほどの回遊魚の例を考えると理解しやすいのですが、長時間負荷のかかる部位が必然的に多くの遅筋で構成されていることになります。

人間の身体だと、背部に位置する脊柱起立筋や、ふくらはぎにあるヒラメ筋などが姿勢の保持に大きな役割を果たしているため、遅筋の割合が高いです。

そのため、これらの部位に刺激を入れて鍛えていくことで、効率的に筋持久力を高めることができるでしょう。

脊柱起立筋

体幹部の安定のために欠かせない脊柱起立筋。

大まかには、脊柱に近い部位から、棘筋、最長筋、腸肋筋の3つの筋から構成されています。

デスクワークを長時間行って背中が痛くなることがありますが、これも脊柱起立筋が疲れているというサインです。

鍛えることで腰痛の予防にもつながるので、現代人が率先して鍛えるべき筋肉ともいえるでしょう。

いくつか、トレーニングのメニューを紹介していきます。

①バードドッグ・クランチ

1:四つん這いになり、腰と膝、肩と手首が同じ位置にくるようにして、背中をまっすぐに保つ

2:足と手を伸ばして、地面と平行になる状態まで上げる

3:数秒キープしたあと、肘と膝がくっつくまで引きつける

4:再び手と足を伸ばしていき、同じ動作を繰り返し行う

 

脊柱起立筋の代表的な筋力トレーニングです。

手と足を伸ばしたままキープするやり方も効果的で、背中の辺りに効いてくる感覚を実感することができます。

自重だけで行える手軽さも魅力なので、テレビを見ながらや家事の合間など、スキマの時間やスペースで行っていきましょう。

②バッグエクステンション

1:床にうつ伏せになる

2:ゆっくりと状態を反らし、床から状態を上げていく

3:上げたところで数秒間キープし、状態を降ろしていく

 

こちらも手軽に取り組める脊柱起立筋のトレーニングです。

背筋の動作と似ていますが、ゆっくりとした動きで取り組むことがポイントで、そうすることで脊柱起立筋に刺激を与えることができます。

応用としては、手を前方に伸ばして行うスーパーマンという種目もあり、こちらも背部を中心とした筋肉に効果的ですので、ぜひ取り組んでみましょう。

(図)スーパーマンの姿勢

 

③デッドリフト

1:両手を伸ばしたままダンバルを持ち、両足を肩幅に開いて立つ

2:背中を伸ばしたまま膝を曲げ、状態を約45°前傾させる

3:腰を前方に移動させながら状態を起こしていく

 

デッドリフトは主に臀部を鍛えるトレーニングとして有名ですが、背中をまっすぐに保つことが重要であるため、脊柱起立筋も鍛えることができます。

姿勢の保持がしっかりと行える強度が重要であるため、無理な負荷をかけて行わないように注意しましょう。

股関節の屈曲・伸展との連動で刺激が入るので、ランニング動作にも生かしやすく、より動的な動きの中でトレーニングを行いたい方にはおすすめです。

 

ヒラメ筋

ふくらはぎに位置しているヒラメ筋。

腓腹筋と合わせて下腿三頭筋と呼ばれ、下半身の安定のためには欠かせない筋肉です。

腓腹筋が外側にあると表現するならば、ヒラメ筋はその深層部にその名の通りヒラメのように扁平な形で位置しています。

腓腹筋が速筋繊維の割合が高いのに対して、ヒラメ筋は遅筋繊維の割合が高いので、長距離系の種目でも重要な役割を担っているのです。

また、遅筋繊維の割合が高いのにも関わらず、ヒラメ筋は大きな力を発揮できる筋肉でもあります。

これには筋肉の形が関係しており、羽状筋と呼ばれる構造がポイントです。

羽状筋の場合は太くて短い筋繊維が斜めに並んでおり、筋の収縮力の伝わり方は遅いのですが、筋の断面積が大きい分、大きな力を発揮できます。

適切にトレーニングを行うと大幅なパフォーマンスの向上も期待できるので、強化に取り組んでみましょう。

①カーフレイズ

1:足を肩幅に開いてまっすぐ立つ

2:踵を床からゆっくりと上げていく

3:踵をゆっくりとおろしていき、床まで完全におろさずにキープする

 

ヒラメ筋の代表的なトレーニングであるカーフレイズ。

初心者の場合は重りを持たず、踵を上げ下げするだけで十分なトレーニング効果を得ることができます。

ポイントは両足が同じリズムで動くようにすることで、左右のバランスが悪いと片足に負荷がかかりすぎてしまい、かえってケガのリスクが高まってしまいます。

バランスよく動かすことができているかを、常にチェックしておきましょう。

②スタンディング・レッグカール

1:壁に手を添えて、壁から遠い方の足を床から離す

2:膝が前に出ないように気をつけながら、踵をお尻に引き付ける動作を繰り返し行う

 

下腿三頭筋を鍛えるだけでなく、ランニングの際の足運びについても修正が行えるメニューです。

ランニングの際のヒラメ筋の筋発揮は重要ですが、あくまでも補助的に力を発揮できるフォーム作りが重要だといえます。

というのも、下腿三頭筋が主導でパワーを生み出すと、過剰な負荷で筋肥大が起こりやすく、重くなってしまいランニングの効率が下がってしまうからです。

正しいランニングフォームの獲得のためにも、スタンディング・レッグカールを行う際はランニング動作との繋がりを意識しながら取り組みましょう。

筋肥大を防ぐために

ヒラメ筋の項でも少し触れましたが、筋持久力の向上のためには筋肥大を防がなくてはいけません。

筋パワーは筋肉の断面積に比例しており、筋肉を大きくすれば力強さが手に入りますが、その分たくさんのエネルギーが必要となり、余分にエネルギーを消費してしまうリスクが高まるからです。

そのため、ウエイトトレーニングに取り組む際も、筋肥大を起こさない範囲での適切な強度を理解しておく必要があります。

そこで参考にしたいのが、RM法を用いた強度の設定です。

RM法

最大筋力を基準として、ウエイトトレーニングの効果を分類した指標です。

最大の力で1回行うことのできる負荷を「1RM」とし、回数ごとにトレーニングによって得られる効果が異なることが分かりやすくまとめられています。

例えば、5回行うことのできる負荷は「5RM」と表すことができるというわけです。

では、筋持久力の強化のためにはどのぐらいの負荷が適切なのでしょうか?

多少の誤差はありますが、一般的には15RM以上が好ましいとされています。

つまり、あまり負荷が高くないウエイトで繰り返す行うことが重要なのです。

反対に、筋肥大を起こすのは4~12RMの範囲と言われており、筋持久力の回数との見極めが難しい部分ではあります。

筋持久力の向上を狙ったウエイトトレーニングを行う場合は、正しい負荷の設定に細心の注意を払いましょう。

 

ウエイトトレーニングは長距離界のトレンド!?

正しい負荷で正しい回数行えば筋持久力の向上につながるウエイトトレーニングですが、以前は筋肥大の恐ればかりに目が行き、陸上の長距離界ではタブーとされてきました。

しかし、正しく行えばその分の効果を得て走りにつなげることができるとあって、世界のトップ選手たちも身体づくりのためにウエイトトレーニングに取り組むようになりました。

先日の福岡国際マラソンで日本歴代5位の2時間7分19秒をマークした大迫傑選手も、アメリカのナイキ・オレゴン・プロジェクトに所属し、ウエイトトレーニングに取り組んで結果を残した人物の1人です。

地道なトレーニングのおかげで細くしなやかな筋肉に磨きがかかり、フルマラソンでも後半まで大崩れしない走りを手に入れました。

大学駅伝界では、出雲駅伝を制して「スピードチーム」として注目を集める東海大学も、ウエイトトレーニングに日頃から励んでいます。

成果が上がってきており、今後ますます普及していくことが予想されているトレーニングなのです。

見落としがちな能力だからこそ

今回は筋持久力についての解説を行いました。

全身持久力については循環器系が大きく関係しており、健康維持のために役立つこともイメージしやすいとあって広く認知されていますが、筋持久力に関してはスポーツ現場でも未だに介入が不足している分野でもあります。

筋肉の特性を知ればそれに対するアプローチも見えてくるので、まずは自分の筋肉について知ることから始めてみましょう。

今から始めれば、数か月後に劇的な変化が表れて、大幅な能力の向上を実感できるかもしれませんね!

 

全身持久力についての解説はこちらから

https://trainingmask.jp/?p=692&preview=true

 

 

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